お隣さん.5 ページ5
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「これ、簡単なものですけど…。」
なんとなく彼の反応で、水に何かを盛られたために私に対しても疑念を抱いたのだろうと察して。コンビニまで行って何も入ってないと証明できるものを買ってきたけど、彼はそれを袋に入れ直して。
「手料理、食べたいな。
異に優しいもの。」
なんて言い出したから、お味噌汁を作った。
おかわりまでして食べてくれるのは、予想外だったけど。だいぶ元気になったみたいだしよかった。
「ごめんねー。急に我儘言って。
こんな大家曰く危険人物がいつまでもいても迷惑だろうし、帰るわ。」
「送ります。」
「いいっていいって。すぐそこだし。」
「いえ、送ります。
また倒れてからじゃ遅いんですから。」
譲らない私に、彼は視線を鋭くする。
「…それは俺の部屋に入るのが目的?」
「そんなことが目的だったら、今動けない貴方から鍵を奪って強引に入ってますよ。肩貸すので掴まってください。」
疑わないんじゃなかったんですかって思わないこともないけれど、それは聞けなかった。それはどうしても人を疑うところから入ってしまう彼の人間性を否定するもののような気がして。
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作者名:しぅ | 作成日時:2021年4月30日 7時