お隣さん.25 ページ25
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奥の部屋に通されて深澤さんと二人きりになる。
「ごめんね、相手が今日何時に来るかわからなくて…。
来ることだけはほぼ確実なんだけど、街で見つけられるのも厄介だなって思ったからかなり早めに店着いちゃってさ。しばらくは自由にしてていいんだけど、この部屋からは出ないでね。」
座らされたソファの感触からもわかる。VIP室的なやつ。そして彼はこの部屋に入れるカードキーを携帯していたから、お店からの信頼も厚い人なんだと。
「…深澤さんの同級生さんとのお話、聞きたいです。」
「いいけど…。またどうして？」
「特に趣味という趣味もないので、こうして空き時間出来てもすることないんです。だったら、深澤さんのお話聞いてた方が楽しいかなって。」
「ん、いいよー。大したことないけどね。
みんなやんちゃな男子高校生だったから。」
それでも、少しでも私の知らない深澤さんが垣間見えたらって浅はかな考えはバレていたのか、深澤さんは自分の話はほとんどしなかった。それでも表情筋が筋肉痛になりそうなほど笑えるエピソードがたくさんあって面白かったけど。
外が暗くなり始めた頃、深澤さんの胸ポケットから阿部さんの声が。
「ふっか、来たよ。
VIPで接客中だって言ったら、案の定強行突破しようとしてるから、そのまま突破されたフリしてそっち向かわせるから。」
「ありがと阿部ちゃん。
あとはこっちでなんとかする。」
そういえば作戦も聞いていないけど…と思ったら上着を脱ぎ棄てた深澤さんにソファに押し倒される。
「な…。」
「ごめん、ちょっとだけ我慢して。
それと、もし俺の事呼ぶならふっかって呼んで。」
そのまま私に覆い被さって、首筋に頭をうずめた深澤さん。バタバタと足音が近づいてきたら、耳に顔を寄せた。
「……好き。」
扉が開けられた瞬間に耳に届いた低い声。
はっきりと告げられたその言葉は入ってこようとした女性にも届いたのか、徐々に足音は遠ざかっていった。
深澤さんが私に覆い被さったのは、女性から私の顔が見えないような配慮だったのかなって。どこまでも優しくて、ずるい。
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作者名：しぅ
| 作成日時：2021年4月30日 7時
