お隣さん.3 ページ3
.
社内に五月病が蔓延していて岩本さんと苦笑した日の夜。
いつも通り帰路を歩いていると、暗がりの中うずくまっている人を見つけた。
「大丈夫ですか…!?」
近寄るとふわりと香った甘い匂い。
こちらに向いた顔はその美しさには似合わない、酷く歪んだ表情をしていた。
「だい、じょぶ…。
いえ、このちかく、だから…。」
「送りますよ。
歩けそうですか?」
肩を貸すとなんとか歩を進める男性。
回されている腕は細いのに、背は高くて。
歩くこと数分。着いたのは。
「…このアパート、ですか?」
「うん…。ごめんね、もう大丈夫だから。」
この時間に電気の点いていない部屋は2つだけ。
仕事帰りの私の部屋と、もう一つ。
…つまり彼が、あの部屋の住人。
先程より少しよくなったのか、はっきりとした喋り方になったけど顔色は悪いまま。そのまま放っておけるような具合ではなさそうで。
「私、2つ隣の部屋に住んでいるんです。
すぐに夕食作るので上がっていってください。」
まだ歩の定まらない彼を強引に部屋まで連れ込んで、椅子に座らせた。
.
1222人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しぅ | 作成日時:2021年4月30日 7時