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かき氷を食べたり、綿あめを食べたり。甘党の龍斗は満足そう。私もこういうお祭りくらいでしかなかなか食べられないりんご飴を食べられて満足。
「…あ、射的だって。」
「やってみようか。」
「私、出来なさそうだし見てるよ。」
特賞の温泉旅行券がまだ残っていると聞いて、龍斗が浴衣の袖を捲った。その男らしい仕草にまた勝手にきゅんとしたのは、口が裂けても言わないけど。
「当たり〜〜！！特賞出たよ〜〜！！」
そうやって射的屋の店主さんがベルを鳴らしながら叫べば人が寄ってくる。どんな人が当てたのかと野次馬の如く集まったらしい。
「お兄ちゃん見ない顔ねえ。温泉旅行、誰と行くの？」
「彼女と一緒に。僕の仕事があるので、夏には難しいかもしれないんですけど、紅葉が綺麗な秋くらいには行ければいいなって思ってます。」
「あら、素敵ねえ。お姉ちゃんも素敵な彼氏さんでよかったわね。」
「はいっ…！」
まさか龍斗が先のことまで考えて、射的で狙ってくれてたなんて思わなくて。思わず涙を零せば、「泣かないでよ」なんて言って優しく撫でてくれる。
「ばか、もっとすきになるじゃん…。」
「だって、俺が大好きだもん。…まだまだ夏の間は寂しい思いさせるかもしれないけど、秋になって落ち着いたら一緒に温泉行こうね。」
「…うん。待ってる。」
これだからうちの彼氏は…なんて思ってたら、急に龍斗に突撃した何か。
「お姉ちゃんを離せ〜！」
さっきのちびっこ集団の1人が龍斗に泣きながら喚いている。周りの大人たちもどうしたのかと困惑していた。
「俺が、お姉ちゃんと旅行に行くんだ！！」
「こら！あんた、なに言ってんの！」
どうも先程私たちに声を掛けてくれていた女性の息子さんらしい。お母さんが叱っても、男の子は龍斗から離れる素振りを見せない。すると、龍斗が。
「…ごめんね。Aは俺の彼女だから、そこは譲ってあげられない。」
そう、男の子を優しく諭していた。後でお母さんが謝りに来てくれた時に言っていたけど、どうやら私に一目惚れをしていたそうで。でも、龍斗の大人な対応に「男として負けた…」と呟いていたらしい。やっぱり、最近の子はませてるなあ…。
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作者名：しぅ
| 作成日時：2022年9月2日 15時
