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「…断られたら気まずくなるから、言わんでおこうって思ってる部分もあった。」
「それは私にもあった。」
「…ええの、俺で。」
「あんな藤原先輩に見せつけるようなこと言っておいて、急に弱気になるなや。こっちが調子狂う。」
決して漫才ではない。私たちはお互いに本気で、どうしたらいいか悩んできてたんだ。
「さて、さっさと終わらせて、帰るで。このままやと日が暮れる。」
「ムードもへったくれもないな、お前は。」
「……なあ、恭平。」
「うん？」
「……名前、呼んでくれへんの？」
いつからだっただろう。恭平から名前を呼ばれんくなったのは。最初は気にもしてなかったけど、彼への恋心を自覚していくと同時に、すごく寂しくなったのは覚えてる。
「〜っ。あんま可愛いこと、言わんといて。」
押さえられなくなりそ、って熱っぽく呟いた恭平に、流れる様に唇を奪われた。そのまま目線を合わせて、「A。」って優しい声で呼ぶ。そんなん、こっちも照れるやんか。
「真っ赤。」
「…恭平のせいやろ。」
「俺のせいやな。可愛い。」
私がお洒落をしてみたところで「馬子にも衣裳」とか、罵るボキャブラリーだけは豊富な脳みそから引っ張って言ってきてたりしてたのに。さらっと可愛いとか言い出すなんて、壊れたんちゃうか。どうであれ、恭平から可愛いと言われるのが嬉しい私も私やけど。
「…恭平は、きす、したことあるん？」
「ないね。」
「……うそや。」
「ないってば。」
ずっと、お前以外好きじゃなかったんやからって呟く恭平の言葉に嘘が無いのは、幼馴染やから分かっているけど。あまりに自然なキスをしてきたから、疑ってかかるのも仕方ないと思ってほしい。
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作者名：しぅ
| 作成日時：2022年9月2日 15時
