. ページ16
.
「…ってわけだから、Aもすまんが最後まで付き合ってやってくれ。」
そう言って、先生はプリントの束を置いて行った。今日はこれを終わらせて、職員室にいる日直の先生に提出したら帰っていいらしい。しかも、先生もいないから悪いことを考えようと思えば出来はする。…答えを写すなんて私が許すと端から思っていなかったのか、恭平はきちんと教科書を取り出して、解く素振りを見せていたけど。5分後には。
「飽きた。」
「早いねんな。まだ1枚も終わっとらんやん。」
私たち以外に誰もおらんくて、いつもとは違い静かな。そして空調も完備された教室。これ以上集中できる場所が他にあるのかって感じやのに、恭平には窓の向こうの暑い外が魅力的に映るのか、視線を外にずらした。私も仕方がないかと窓の外を見るのをやめて、プリントを一緒に覗く。
「…これ、この間宿題やる時に教えたやん。」
「覚えとらん。」
「…もー。」
何十回教えたところで覚えないんだろうな…。小学校の頃からそんな感じなので、もう慣れたけど。
「ほら、ここはこれ代入して…。」
「代入って、これ入れればええんか？」
「そっからか…。中学1年でやったやつやぞ…。」
数学の基礎の基礎からやり直して。これは時間かかるし、午前中には終わらんな…と思っていた頃、がらっと教室の扉が開いた。
「やってるか、諸君。」
「藤原先輩！部活はどうされたんですか？」
「今休憩中。それにしてもええなあ、恭平。補習を彼女に付きっ切りで見てもらえるって。」
「何言ってるんですか…！？」
私と恭平はただの幼馴染。それは一番、藤原先輩が知っているはず。あまり知らない人には関係性をよく勘違いされるけど、藤原先輩は絶対私たちが恋人同士っていうのは勘違いだって知ってるはずなんだ。だって、
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しぅ
| 作成日時：2022年9月2日 15時
