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涼太の病室へ戻ると、深澤さんと佐久間さんはお帰りになられるとのことで。
「記憶のことは、2人でゆっくり話しなよ。」
「はい。ありがとうございました。」
「俺らもまたお話しに来るね！」
「うん。ふっかも佐久間もありがとう。」
また来ると言い残して、おふたりは病室から出て行かれた。と、同時に翔太も出て行って。何も言わずに出て行ったから、声を掛けようとしたんだけど。それは、涼太に止められた。
「多分、気を遣ってくれたんだ。俺とAが2人で話せるようにって。」
気を遣ってくれるなら、私の気持ちだって考えて欲しかった。今、涼太と2人きりで話したら泣いてしまいそうで、簡単に挨拶だけして私も帰ろうと思ってたのに。
「…忘れちゃったことに関しては、謝って許される問題でもないかもしれないけれど、本当にごめん。ただ、Aを好きだった気持ちを忘れたわけじゃないし、今でももちろん大切にしたいって本気で思ってる。身勝手だけど、待ってて欲しんだ。思い出すまで。」
本当に、身勝手だなって思う。
式場も既に抑えていて、涼太が思い出すまで延期…と言ってもいつ思い出すかだって分からないんだから、延期のしようもない。
わかっている。仕方のないことなのは。事故のせいであって、涼太のせいでないことは。それでも今、誰かを責めずにはいられない。それしか、私のこの怒りなのか悲しみなのか分からない感情が表せない。
なんて言えばいいのか分からなくて黙っていても、涼太は返事を急かすような真似もせずのんびり外を眺めていた。たまに飛んでくる鳥を見て、嬉しそうに目を細めている。その様子をじっと眺めてしまうくらい、私は涼太が好きで。
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作者名：しぅ
| 作成日時：2022年1月21日 11時
