何もないセカイ【赤】 (ページ1)

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「あ、翔太。」

「大丈夫なのかよ…。」

「ふふ、心配してくれたの？」

「…にやにやすんな。」

病室のベッドの上でにやにやというかにこにこしている彼と、そんな彼にからかわれていらいらしている彼。どちらもよく見知った顔だけど。見知ったというか、見飽きたというか。

「Aも忙しいだろうにわざわざありがとね。」

「急に事故に遭いましたとか怖くて飛んでくるしかないよね。」

「Aまで心配してくれて…。」

「…そりゃするでしょうよ。」

感動だね～とか。ほんと事故に遭ったとは信じられないくらいに呑気ににこにこしている彼、宮舘涼太にプロポーズされたのはほんの10日前のこと。高校の時に付き合い始めてもう10年くらいになるか。周囲には「まだ結婚してなかったの！？」と驚かれるくらいの付き合いで、同棲は高校出てすぐに始めたし、結婚と言っても式だけ挙げようか、くらいだった。それだけだというのに、浮かれた様に「何が似合うかな。」なんてドレスのカタログを覗いていた涼太が突然事故に遭いました、なんて。最悪の事態だって想定するし、気が気じゃなくて定時で上がってすっ飛んできた次第だ。

「もー…。ほんとに心配したんだから。」

「ごめんって。傷もそんなに深くないし、すぐ退院出来るみたいだから。」

「…ダンスに支障は？」

「そこはまだ何とも…ってお医者さんも言ってた。けど、特に内部に損傷とかもないみたいで、傷の痛みが響かなければ別に大丈夫だろうって。」

心底ほっとした表情を浮かべてるのはもう一人の幼馴染の翔太。産まれた病院から一緒の幼馴染がまさか天下のジャニーズとして一緒にデビューするなんて、本人たちも私も思ってなかったみたいだけど。

「明後日撮影なんだから治せ。」

「それは流石に無理があると思うよ、翔太。」

「A、翔太は鬼畜の権化だから。」

「人を変な風に呼ぶな！！」

こんななんでもない会話が出来るのも嬉しくて仕方ない。涼太に何かあったらどうしようとここまでくる電車の中は不安でいっぱいだったから。改めて涼太のこと好きなんだなあってぼんやり考えていた矢先のことだった。

「あれ、A、指輪…。」

結婚するの？おめでとう。って。
私の1番好きな表情で、目の前の彼は1番残酷な一言を放った。

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