もう一輪 (ページ29)

今日:6 hit、昨日:12 hit、合計:235,942 hit

29輪ページ29

.

side.dt

dt「ただいま。」

nb「おかえり。」

dt「Aは？」

nb「寝た。
普通に出社したつもりがいつの間にかマネージャーになってましたなんて、疲れないわけないだろうし…。」

その上で精神的な負担も抱えてしまえば、体も心も限界か。彼女が飲みかけにしたらしいティーカップを片付けていると、翔太がキッチンまで寄ってきた。

dt「…どうしたの、珍しい。」

nb「……俺、どうするのが正解だったの。
俺たちのAへの態度は正解だったの？」

dt「……そんなの、俺にもわかんないよ。」

俺たちのせいで、女子から僻まれ、疎まれてきたA。
そんなAにこれまでの人生でどう接してあげたら、もっと今より環境がよくなっていたかなんて、俺にも分からないし俺が聞きたいくらいだ。

dt「…そうだなあ。」

好きにならなかったら、こんなことにはならなかったかもしれない。

いつも隣にいてくれる彼女のことを意識しだしたのはいつのことだったか。もう、日常になりすぎて覚えてもいない。

好きだから、離れたくなくて。
好きだから、離したくなくて。
好きだから、隣にいて欲しくて。

そんな俺たちの我儘が、結果的にずっと隣にいてくれたAを傷つけることに繋がっている。

彼女のことを好きにならずに、友達として適切な距離を保てていたのなら、彼女はこうして傷つくこともなかったのかもしれない。

.