熱中症にはご注意を ページ4
10月にしては、随分と暑い日だ。
秋晴れの雲ひとつ無い空からジリジリと太陽が照りつけるから、気温は最高潮。
昨日は雨がざんざか降っていたっていうのに。
お天気お姉さんは“9月中旬並みの暑さです”と言っていた。
そこで、『うわ異常気象じゃん家でアイス食べて涼むか！』とならないのがチョコちゃん大好きAクオリティ。
暑くても、寒くても、雨でも雪でも風が吹いてもあの可愛い推しネコと戯れる所存だった。
その一方、当のレオナは完全にバテていた。
夕焼けの草原も確かに気温は高いが、こんなにじっとりとしてない。空気が重い。湿度高すぎだろふざけんな。
レオナが不幸だった事は、この路地裏にいた事だろう。
影なのはいいが、残念なことに風通しが絶望的に悪かった。
そして、夕焼けの草原は現在冬。体が...心が？詳しいことは分からないが、とにかく慣れていないのだ。
『あっつ...おかしいよこんな世の中...』
絶対に俺を抱きながら言うセリフじゃねェ。
そう突っ込んでやりたいが、生憎今のレオナでは伝わらない。
代わりにしっぽで軽く腕を叩いたら、ようやく嫌がっているのを察したのか、慌ててしゃがんで腕を緩めた。
「(あっちぃ)」
Aがしゃがみ込むが早いか、レオナはするりとその腕から逃げ出して距離を取った。
ワンコばりに残念そうな顔をしているAの表情に心が痛まない訳じゃないが、今はそれより暑いのが勝つ。
というか、悲しそうなのもたまにはいいかもしれない。
断じてそういう嗜好をお持ちなわけではないが。
普段ならなんだかんだ言いつつも結局抱っこを満足そうに受け入れているレオナだが、さすがに今日ばかりは大人しくしてやる気はなかった。
暑い。
暑すぎる。
『...大丈夫？』
Aは、ぺたんと普段に比べて力無く丸まったチョコちゃんの体をそっと撫でた。
心なしか、普段より体温が高い気がしなくもない。
熱中症
夏、担任や体育の先生から耳にタコができるほど聞かされた言葉が、ふと頭をよぎった。
そんなまさかとは思いつつも、有りうるとも思える。
こんな可愛い子と会えなくなるだなんてあってはならない。
Aは、端っこに並べてある自分のカバンのうち、スポーツバッグをさっと肩にひっかけて立ち上がった。
『ごめんチョコちゃん、ちょっと待ってて。』
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作者名：來夢 | 作成日時：2023年5月27日 7時
