第十四話 ページ16
8年半以上聞き続けた耳馴染みのいい音と共に、いじられキャラの定着した担任が数人に囲まれながら教室を出ていく。
それを横目で見ながら机の中から教科書を引っ張りだしていると、先日の友達がくるりとAの方を振り向いた。
「ねーA、昨日の猫いるじゃん。」
『チョコちゃんのこと?』
「うん。いつからあの子のとこに通うようになったの?」
『夏休み。部活引退して丁度1週間の時...あ、でも通い始めたのはその更に1週間後だけど。』
「てことは、もう4ヶ月くらいになるのか。...愛やば。」
『うわひどーい!』
ぷくっと申し訳程度に頬を膨らませてわざとらしく怒りながらも、Aの意識はチョコちゃんの方へ寄っていく。
今日は何してるかな。もしかしたら、また外に出てるのかも。
それとも、やっぱりいつものように寝てるんだろうか。
どんなチョコちゃんも可愛いからいいけど。
あーもー大好きだぞー!もふもふサイコー!
友達は...悠は、顔を緩めたAを見ながら溜息をついた。
この親友は、少しマイペースすぎるんじゃなかろうか。
「(なんだったんだろう、あの猫。)」
Aを見つけた時の輝いた目、
アタシがAの名前を呼んだ時の真ん丸な目、
呆れた時のじとりとした目。
どれをとってもリアルで、細かくて、
...まるで、本当は人間が化けているんじゃないかってくらい表情豊かだった。
「(なーんて、考えすぎだよね。夢物語じゃあるまいし。)」
ちらりとAの方を伺うと、どうやら完全に件のチョコちゃんに心を持っていかれてしまったらしい。
またひとつ溜息をついて、机にぺしゃりと突っ伏した。
「(そういえば昨日、母さんがまーた骨董品買ってたなぁ。
今度はなんだっけ...あぁそうだ、鏡だ。ったく、母さんってばうちにどれだけアンティーク品があると思ってんだ?)」
マイペースさはお互い様。類は友を呼ぶ。
似た者同士のAと悠は、それぞれ意識を流していった。
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作者名:來夢 | 作成日時:2023年4月6日 21時