この人が欲しい

弟 ページ29

彼女の部屋の鍵をもらってから、毎日のように彼女の部屋に寄り道してから帰る日々。


「君、毎日いるね。」

『やっぱり、さすがに迷惑？』

「別にいいけどね。」


そんな会話をしながらも、ちょっとだけ彼女が嬉しそうな気がするのは、俺の自惚れなのかな？

今日は泊まっていこうかな〜？なんて思ってた23時過ぎに、彼女の部屋に突然の訪問者。
インターホンに映る人物は、彼女の大好きな人だった。


「のえるだ！」

『のえるくん？』

「あの子が連絡もせずに来るなんて、何かあったな！」


そう言いながら玄関に向かった彼女は、扉を開けるなり、泣きそうになりながら彼女に縋り付く弟くんを優しく抱き締めた。


【椿ちゃ〜ん】

「はいはい！話聞くから！」


仲良し姉弟。
実はたまに嫉妬する時もある。

でも、俺の知らない絆が、この２人にはあって、そこに簡単に割って入ってはいけない気がしていた。


『椿さん、俺帰るね。』

【樹！え？え？】

「あー！いいの。樹はいいの！」

【そうなんだ。あ！だったら俺、お邪魔だよね？】


のえるくんが、一瞬戸惑った意味はわかる。

他人を家に入れたくないと言う彼女の部屋に、彼氏とは言え、俺が居た事にビックリしたんだろう。


「大丈夫よ。この人、毎日いるから。」

【毎日？】

「うっかり合鍵渡したら、毎日来るのよ。

だから、気にしなくていいよ。樹、またね。」

『うん。また！』


うっかりかー！
ほんと、うっかりだったんだろうな。
俺に合鍵をくれるなんてうっかり以外のなにものでもない。

わかっていた事なのに、はっきり言葉にされて、傷付いてる自分がいた。

女の言葉に振り回されるなんて、俺、いつからこんな奴になっちゃったんだろうな。

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