第113話 絶望の音 ページ13
中島 裕翔side
人には思い出したくない過去がある
俺もある、知念もあるだろうしやまも圭人もあるだろう
絶望の音
いろんな音がある中で俺はその音が大っ嫌いだった
人の心を読むときにラジオの周波数を合わせるように一定時間経たないとノイズ音が聞こえなくならない
だけど、その絶望の音だけノイズなしですぐに聞こえるんだ
昔って言っても中学生の頃、今と同じようにこの力は嫌っていた
と言っても今ほどではない
何か事件が起きたら解決するためには使っていた
誰にも内緒で、というわけではない
たった一人だけ、この力のことを言っていた
もう彼の声は思い出せない
それでも嫌というほど俺を呼ぶ名前と顔はこびりつく
俺の名前を呼ぶ声はいつも嬉しそうで
心の声を読んで苦しそうにしている時は何も言わずに寄り添ってくれて
それなのに、俺は彼の心の悲鳴を見て見ぬ振りして
それに後悔したのは彼が飛び降りたと聞いた後で
幸いにも命は無事だと聞いて急いで病院に向かって
名前を呼んだら真っ黒な瞳で俺を見てきて
ノイズもなく心の声がノータイムで聞こえてきた
助けてって言ったのに
その言葉が俺の心を抉って
彼は転校、俺は引きこもり
この力をより忌み嫌うようになった
数年ぶりに聞いた絶望の音
圭人からこの音が聞こえたってことは俺たちに絶望したってことかな…
yt「け…い、と」
そっと目を覚ますと
cn「…大丈夫？」
俺は知念に膝枕されていた
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作者名：慧jump
| 作者ホームページ：http://wakabassl
作成日時：2022年12月3日 8時
