キングダム短編集 (ページ8)

今日:10 hit、昨日:7 hit、合計:6,646 hit

・ページ8

医務室に着けば軍医の方と録嗚未にぎゅうぎゅうと止血される。

思ったより深く切れていた様で、なかなか血が止まらずにいた。

傷を圧迫されて酷く痛む。

遠くに足音が聞こえ、段々と近づき、バンと音を立てて扉が開かれる。

無論、言わずもがな王騎だった。

私の腕を見るなり、眉間に深く皺を寄せ、此方にやってくる。

「録嗚未、貸しなさい」

王騎は、録嗚未に変わり止血を始めた。

暫く無言のまま止血され、血が止まれば薬を塗られ、大袈裟に包帯が巻かれた。

手当を終えて暫くは、皆が沈黙を貫いていた。

王騎はその瞳に怒りを滲ませ、その表情にAを怯えた。

王騎は一度座り直すと、Aに向かい合い口を開く。

「今まで私は、貴方が自分を傷つける行いを黙認してきました。ですが、そろそろ我慢なりません。己の身であろうと、私の大切な者を傷つけることは決して許しません」

Aは、何も言えずに下を向いていた。

そんなAを横で見ていた録嗚未は、直ぐに気づいた。

王騎はAを思い、傷をつけることは許さないと言っているが、確実にそれは伝わってない。

Aは、第三者からの善意や好意に慣れてないため、善意に気づけない、又は上手く受け取れない事を録嗚未は知っている。

このままでは、重ねてすれ違ってしまう。

何だかんだで気に入ってるAと敬愛している王騎の為に録嗚未は口を出す。

「おい、履き違えるなよ。殿はお前を叱責しているのでは無い。ちゃんと聞いていたのか。お前が今悔いるべきなのは、決して自分を傷つけた事では無く、殿の大切な御方を傷つけたことだ。」

「大切な御方........」

「お前以外に誰がいる。お前は大切な人が傷ついた姿を見て、何とも思わないのか。そんな奴じゃないだろう。後は分かるな？俺と軍医殿は席を外す故、きちんと殿と話し合うように。いいな？」

そそくさと録嗚未と軍医の方は王騎に拱手すると部屋を出ていった。