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急いで袖を伸ばし腕を隠す。
王騎は袖をギュッと掴んでいるAの手を取り、袖からそっと離し、今度は王騎がAの頬を指先でそっと撫でる。
いまだに不安の色を滲ませる瞳をよそに巻かれた包帯に口付ける。
その傷ですら愛しむように肩にかけて優しく唇を落していく。
肩にある比較的新しい傷に、舌を這わせればAは驚き腕を引く。
ゆっくりと、怖がらせることのないように深衣の裾を割り、脹脛に手をかけた。
落ち着かせるように足を撫で、力が抜けたのを見計らって手を滑らせながら裾を捲り上げる。
「あ、あの、王騎様」
裾をぎゅっと握りしめているAの手に王騎は自分の手を重ねて腕と同様に大腿にも口を付ける。
彼女の大腿には、腕と同じように傷跡が残っている。
そのキズは、何重にも上書きされているため、戦場に赴き生傷が絶えない王騎でも見ていて痛々しく感じるほどだ。
傷跡を指先で優しく撫でぴくりと跳ねる脚に何度か口を付けると乱れた深衣の裾を直してからはるかの横に寝転んだ。
「あの、王騎様......もう終わりですか?」
Aは、四肢に口付けを受け、王騎から受けとった熱が去っていく事に、寂しさを感じた。
「おやァこれでは物足りませんでしたか??」
意地の悪そうに笑う王騎に、羞恥を覚えAは、王騎の胸に顔を埋めた。
珍しく自分から擦り寄ってきた姿に嬉しくなり、包み込むようにAを抱きしめた。
「ただ貴方を慈しみたい気分だっただけですよォ。貴方が私の想いを受け取ってくれて少々浮かれておりました。自信を持ちなさい。この私が貴方に慕情を抱き、恋焦がれているのですからねェコココココ」
「私も...その....お慕いしております。」
「おやァ。可愛いことを言いますねェ。今宵は、共に眠りにつきましょうか。貴方は暖かいので、よく寝れそうです。」
そっと前髪を掻き分け額に口付けを落とし明かりを消すとAを腕に抱き衾をかける。
Aは王騎の胸に擦り寄る。
王騎からは、ふんわりと花の香りがする。
今日の湯は、花を浮かべていたのかな。
スーっと肺いっぱいに吸い込んでゆっくりと息をすれば程よい暖かさに直ぐに眠気がやってきた。
人と触れ合う事がこんなにも心が暖まるなんて知らなかった。
Aはなんだか泣きそうになった。
すると王騎の腕がそっと頭を撫でる。
ずっとこうして王騎様と居られたらなんて子供みたいなことを考えながらAは眠りについた。
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ナタデココ(プロフ) - 続き楽しみにしてます( *´꒳`* ) (3月16日 7時) (レス) @page17 id: bb115dbd7a (このIDを非表示/違反報告)
遥か彼方(プロフ) - ドリアンさん» コメントありがとうございます!現在騰様のお話の続きを制作中の為楽しみにして頂ければ幸いです。 (11月28日 18時) (レス) id: 45e467060c (このIDを非表示/違反報告)
ドリアン(プロフ) - この作品大好きです!応援してます (11月27日 20時) (レス) @page17 id: f43b62c151 (このIDを非表示/違反報告)
遥か彼方(プロフ) - かささん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです。 (10月18日 19時) (レス) id: 45e467060c (このIDを非表示/違反報告)
かさ - 素晴らしいです! (10月18日 12時) (レス) id: dca8607222 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥か彼方 | 作成日時:2023年10月15日 20時