90.危ない橋の手前 ページ4
仕事を休んでいると朝も夜も関係なくて…
何で一日は24時間なんだろう?
とか…
こんな時間の縛りが無ければ、もっとやりたい事が出来るのに。
とか…
寝るのが勿体ないなぁ。
とか…
そんな、どうでも良いような事を考える時間が増えた。
小さな頃から寝付きが悪くて夜型の人間だった私は、働くようになって一人で自由な生活を始めると、休みの前日には夜な夜な一人でドライブに出掛ける日々を送っていた。
何にも見えない夜の海に行ったり…
山から街の夜景を見たり…
昼間には見えない景色を見るのが好きだった。
私と言う存在を隠してくれる夜…
例え私の事を知らない人にでも、自分の存在を目にされるのが嫌だった。
誰とも会わないという事は無理でも、顔を合わせるのは最低限、立ち寄ったコンビニの店員くらいだったから気持ちは楽だった。
昨夜は、あんな話を聞いたせいか忌まわしき佳織の事ばかりを考えてしまい、眠れない夜を過ごした。
(楽しい事を考えるんだ、楽しい事を…)
入院していた時に小林先生が言っていた事を思い出して、明日のパーティーを想像してみる。
『うぅ……
全然楽しめる気がしない…
もぅどうしたらいいの……』
せっかくのお誘いなのに、まだ気持ちがそこに向かない…
彼らの事を覚えている状態なら、天にも昇る気持ちで“今か今か”と、この時間を過ごしていたんだろうな…
(顔を合わせたら、皆どんな反応するだろう…
そもそも、私ってどう思われてたのかな…)
ふと、
『“人間は学習の動物だ…”』
ユンギの言葉…
浮かんで、呟いて、消えていく。
『いちいち心に刺さってくるんだよなぁ…
名言製造機……ミン・ユンギ…』
私は全く学習しない人間だなぁと、改めて思う。
堕ちる所まで堕ちないと、浮上出来ない体質になってしまった。
いつも頭を巡るのは、辛気臭い戯れ言ばかり。
堕ちずに浮上するには、誰に頼れば良いのか…
私が物事を考え出すと、ろくな事にならない…
頼ったその人を傷付けて不幸にするのは目に見えている…
堂々巡り…ループする…脱け出せない…
“自分は変わるんだ、チャンスは今しかない”
って、あの時は強い気持ちで思っていたのに…
結局変われなかった。
ふてぶてしく、図太く、厚顔無恥に生きれたらって思うけど、人の顔色を窺って生きてきた私にはとても難しい…
-♪ピンポーン♪-
(誰だろう…?)
『はーい…
どちら様ですか…?』
返答がない。
(えぇ…
何…?
怖いんだけど…)
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作者名:Miyoshi | 作成日時:2021年7月11日 2時