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(私はしがない会社員だ。
今は休職と言う名の無職みたいなもんだし…
見栄を張っても仕方ない!
あぁ…でもなぁ……
折角の誕生日だし…今日くらいは!
いや…でも無職…)
あーでもない、こーでもない…
と頭の中で喧嘩する自分の分身。
そんなこんな一人で百面相をしていると…
「お客様、挙動が不審ですよ?」
肩を叩かれそんな言葉が飛んでくる。
『す、すみません!』
万引きしたと思われた!?と思い、慌てて振り返り謝る。
「何やってんだか…」
『え…』
目の前に居たのは、呆れた表情で私を見つめる親友の美穂だった。
…………………………
ショッピングモール内のカフェに入り、美穂と最後にあった日以降の事を出来る限り話す。
「そんな事になってたんだ…」
『うん…』
「記憶が無くなるって…
しんどかったね…」
『…………』
「佳織が原因なんだとして、そんな大それた事が出来るもんなの?」
『うーん…
それは私にも分からない。
でも佳織のお兄さんの話では、そう言う事が出来ちゃう人がいるって…』
「にわかには信じられない話だけど、現にこうしてなってるんだもんね…」
『……うん。
私も、こんな事になるとは思ってなかった…』
「私の事、忘れてなくて良かった。
さっき話し掛けた時、もしも『誰ですか?』なんて言われてたら凄いショックだったと思う。
だからね、BTSのメンバーも少しの間だけどあんたと関わって、仲良くなれたかなぁって思った矢先だろうし、一緒に今までの事を乗り越えた分ショックも大きいだろうね…」
『…………』
私の知らない、私と彼らの今までの事を美穂が話していて、私の心が絶望していた。
このままでは本当に駄目だ…
辛くても思い出して向き合わないと…
本当の意味で私は私ではなくなってしまう。
そんな気がした。
焦る気持ちと沈んでいく気持ちとがひしめき合い、何とも言えず苦しくなる。
「それ。」
『え?』
『さっき選んだピアス。
パク・ジミンに似合うと思うよ。
そう言うプレゼントとか選ぶの、昔から上手いよね。
ちゃんと相手の事を思いながら選んだんだから、絶対喜んでくれるよ。」
思わぬ親友からの言葉に、張りつめていた気持ちが一気に爆発して涙が止まらない。
「あと、もう一つ。
あんた、少し前から表情戻ってるよ。」
目を細め、微笑んで私を見る親友。
暖かい日差しが差し込む窓際の席で、私は人目も気にせず声を上げて泣いた。
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作者名:Miyoshi | 作成日時:2021年7月11日 2時