過去のお話 ページ36
母｢紅羽、ちゃんと勉強してるの？｣
高校3年生の冬。
雅紀が殺されたって私の両親はお構い無し。
勉強しろ、顔に泥を塗るな、
これが2人の口癖だった。
母は有名なファッションデザイナーで父は弁護士をしている。
2人とも活躍していてそこそこ有名人ため、
娘の経歴にすら口出ししてくる。
口を揃えてお前も弁護士になるんだって言ってくる。
私も最初は弁護士になるんだって思ってたよ。
でも今は違う。
『勉強してるよ』
母｢ならいいわ｣
父｢推薦貰ってるからって気を抜くなよ｣
私は悪人を裁く検事になりたい。
弁護士なんて犯罪者を守る役職、誰がなるものか。
そう決めてからもう少しで1年になる。
弁護士も検事も、幸い受けるのは同じ司法試験。
何とか隠し通せるだろうか。
『わかってる』
私は父の母校の某有名私立大学の推薦を貰っている。
もともと成績も良かったし、
余程のことが無い限り合格は確実だと言われていた。
雅紀が殺されてから何もかもが変わった。
友人からは哀れみの目で見られ、
教師からも可哀想な奴という目で見られた。
両親は私の成績が下がることや周りの評価を心配した。
心の拠り所は、雅紀の両親のところだけだった。
家にいても学校にいても窮屈な私は、
よく雅紀の家に遊びに行っていた。
雅紀が亡くなった今でもそれは変わらない。
ご両親はこんな私を、
ずっと実の娘かのように大切にしてくれていた。
私も、パパ、ママと呼んでいた。
私の両親は忙しくてあまり家に帰らなかった。
勉強さえしていれば他のことはどうでもいいのか、
私がパパやママのところへ行っていても文句は言ってこなかった。
雅紀の命日。
この日ももちろん、
パパとママのところへ来ていた私。
雅紀母｢紅羽ちゃんは、将来は弁護士さんになるの？｣
『ううん、私は検事になって、犯罪者を裁くの』
そんな話をした。
美味しいご飯を頂いて、テレビを見て、
あぁ、家族ってこんな感じなんだって
幸せを感じていた。
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作者名：らぎ
| 作成日時：2021年2月16日 17時
