形だけでも［完結］ (ページ16)

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放っておけない＊北斗side ページ16

忘れもしない去年の冬。

俺は何となく妻の真希との関係に疲れていた。
スマホには何件も着信。

仕事中は出れないって言ってあるのに。

俺はスマホの電源を切って、外の空気を吸いに屋上へ行った。

そこで出会ったのは、今日1日見かけなかった生徒、
去年自分が担任のクラスの生徒だった。

名前は、朝霧結月。
今年担任してるクラスの男子もこいつのことをよく話してたっけ。

美人だけど話しかける勇気がない。
遊べないタイプの美人。
なんか男子に冷たい。

朝霧さんは高嶺の花だ、って。

なんとなく、声をかけた。

そしたら、目に光るものが見えた。

『泣いてんの？』

結月｢泣いてない｣

なんて無理矢理すぎる嘘をついて、絶望したような顔をした。

1年のときはもっと笑ってたのに。
そう思って話したら、突然立ち上がるから、
倒れた彼女を保健室に運ぶ羽目になった。

保健室に着くと、今日は吉田先生が出張でいないことを思い出した。

彼女をベッドに寝かせてしばらくすると、

結月｢ぁ、…やだ……｣

魘されて、涙を流していた。

ほんとに何があったんだ。
そう思って涙を拭ってやると、

結月｢…せんせ｣

目を覚ました。

夕陽に照らされて、朝霧の首に跡を見つけた。
締められたのか…？
もしかして、虐待…？

思わず、何があったのか聞いた。

そうしたらネクタイを引っ張られ、やってきたのは望んでいた答えではなく、唇の感触。

その後、彼女の苦しすぎる真実を聞いて全て納得した。

俺にしがみつきながら泣いている彼女を見て、
なんだか放っておけなかった。

気づいたら彼女に覆いかぶさって言っていた、

『後悔すんなよ』

って言葉は、彼女に言ったのか、
それとも自分に言い聞かせていたのだろうか。

彼女の｢後悔なんてしないよ｣という言葉に煽られて…

俺は教師として、既婚者として、取り返しのつかないことをしてしまった。

何度も父親にされているはずなのに、まるで初めて感じるかのように俺の下にいる彼女はどこか儚かった。

始まる前に彼女の言った″綺麗にして″という言葉。

それに答えるように俺は、

『つらいなら俺のところに来ればいいよ

全部綺麗にしてあげる』

と言っていた。

俺は多分、誰かに愛して欲しかった、
形だけでも愛が欲しくて、
傷ついた君を利用した。