形だけでも［完結］ (ページ15)

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本当のことページ15

目が覚めたのは昼過ぎだった。
今頃みんなはお弁当食べてるかな。

お腹なんて空かない。
動きたくもない。

何日絶食したら死ねるんだろう。

_ﾌﾞﾌﾞｯ

スマホの通知。
画面を見ると相手は

『松村先生…』

松村【綺麗にしてあげようか？】

無理だよ。
もう、綺麗になんてなれない。

【もう遅いよ】

すぐに既読がついた。

松村【今日休んだのと関係ある？】

松村【学校終わったら家行くから】

そのメッセージに返事はしなかった。

自分から連絡したのに自分勝手かな。
そう思ったけど、別にいいか。

_

夕方、インターホンが鳴って扉を開けると、そこに居たのは松村先生だった。

ずっと外にいるわけにもいかないので、先生を部屋に入れる。

松村｢顔色悪すぎ｣

先生は私の頬を撫でて、首元を触った。

松村｢また締められたの？｣

それだけじゃないよ。
って思ったけど、口から出たのは可愛げのない言葉。

『奥さんはいいの？』

北斗｢あ…そのことで言っておきたいことがあって｣

私が俯いていると先生は苦しそうな顔で話し始めた。

松村｢俺さ、奥さんにずっと浮気されてるの｣

そこで聞いたのは、先生の悲しい事実。

__

先生は5年前、21歳の時に奥さんと結婚した。
最初は円満だった。
毎日のように愛の言葉を囁いて、幸せだった。

でも

ある日偶然、奥さんが別の男の人と歩いているのを見た。

結婚してまだ半年のことだった。

お風呂からあがると、奥さんは誰かと電話をしていた。こっそりドアの向こうから聞くと、

″あぁ旦那？バレてないよ。…ふふ、やだなぁ。アイツ顔はいいけどなんか物足りないんだよね″

相手は間違いなく浮気相手。

それからずっと奥さんの浮気に気づかないふりをして、奥さんに尽くした。

先生は奥さんのことを愛してたから。
奥さんに、愛して欲しかったから。

でもダメだった。
奥さんが心から先生を愛することはなかった。

松村｢俺の奥さん、自分は好き勝手男に会いに行くのに、俺の事は召使いみたいにすぐ縛り付けるの｣

あの日、ずっとスマホが震えていたのはそのためなのだろうか。

松村｢でも去年の冬、傷ついてるお前に会った｣