形だけでも［完結］ (ページ5)

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可哀想な人達ページ5

高校３年生になった今でも私たちの関係は変わらない。
父に汚された身体を松村先生が綺麗にしてくれる。

変わったのは場所だけ。

保健室なんてめったに使えないよ。

無駄に広くて立派なこの高校の校舎には各教科の教室と準備室まで用意されている。

でも、教室から少し離れた数学科教室なんてほとんど使わないし、わざわざ準備室まで行く物好きな先生もいない。

松村先生を除いて。

『せんせーまだ職員室に友達いないの？』

松村｢はぁ？｣

準備室の席に着いて本を読む隣に椅子を持ってきて尋ねた。何度も聞いてわかってるけど、また聞いてみた。

松村｢言ってるだろ、俺は人の少ない静かな場所がいいの｣

『言い訳だー』

松村先生は人が多い場所はあまり好まないらしい。
だから数学科準備室は松村先生の部屋みたいなもの。

松村｢お前こそ友達いねぇの？俺のとこばっかり来て｣

『放課後だけじゃん！それに私友達は多いから』

松村｢高嶺の花だもんな、人気者｣

『それ悪口？』

高嶺の花なんて言われてるけど、話しかけてもらえばすぐ仲良くなるよ。女子には優しくしてるし。

遠くから見てるのなんてほとんど男子。
話しかけられたくもないからまあ空気変わるよね。

『なに』

松村先生は私の髪を掬って尋ねてきた。

松村｢彼氏欲しいとか思わないの？｣

『先生がいるならいい。他の人は無理…』

他の男に触られるなんて、無理。

松村｢あっそ…｣

そんなことをわざわざ聞いてくるってことは、私の存在が邪魔なのだろうか。
そう言えば…

『先生彼女いないの？』

もしいたら…

松村｢彼女はいないよ｣

｢いたらこんなことしてない｣

こんなこと…ね。
別にいいけど。

『あっそ』

松村｢真似すんな｣

デコピンくらった。

そろそろ帰れよって言われて、仕方なく帰る。

この時間が私は嫌い。

わざわざ自分の足で地獄に進んでる時間。

＿＿ｶﾞﾁｬｯ

父の靴はない。
良かった、まだ帰ってきてない。
しばらくゆっくりできる。

課題をやって、ご飯を食べて、友達とLINEして、テレビも見て、気づいたら20:00。

『お風呂はいろうかな』

湯船に浸かりながらのんびりしていると開けられた浴室の扉。

『お父さ…』

父｢結月ただいま｣

完全に油断してたんだ。
このタイミングで父が帰ってくることを予測できなかった。