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首元に冷たい感触。
『やっぱりか…』
突きつけられているのはナイフ。
悠香｢電話を切ってください、要先輩｣
背中を向けていた小牧さんは動きを止め、
目だけでこちらを見た。
悠香｢はやく！！この女殺しますよ？｣
小牧さんは通話を切るふりをして、
ゆっくりとスマホを机の上に伏せて置いた。
小牧｢やっぱり全部お芝居だったんだね｣
小牧さんがそう言うと、悠香さんは
私を解放して驚いた顔をした。
悠香｢いつから気づいてたんですか？｣
小牧｢この懲罰房みたいな部屋に
連れてこられた時から何となく｣
小牧さんは、瀬沢たちがこんなことを考えるほど
頭が良さそうには見えないと言った。
それに…
小牧｢いくら急所を外したからって、
時間の割にその出血量は少なすぎるかな｣
小牧さんもこの違和感に気がついていたらしい。
『用意した血液、せいぜい400ccくらい？
人間そんな量の出血じゃ死ねないからね』
悠香｢…さすがですね、要先輩、石山先輩｣
悠香さんはナイフを私たちに向けながら
服の中に隠していた、
空の血液パックを取り出して見せつける。
悠香｢本当はこんな茶番嫌だったけど、
こうでもしないと先輩本気出してくれないかなって｣
まぁ、石山先輩がやってくれれば
それで終わりだったんですけどねと笑う悠香さん。
小牧｢そんなことしなくたってやったよ。
石山さんにこんなことやらせるくらいだったら｣
悠香さんは私を睨みつけた。
悠香｢はぁ…私はもうあの頃の私じゃない。
お金が…お金が私の全てを変えたんです！｣
彼女は話し始めた
大学を中退してから、誰でもできるような
単調なプログラミングも真面目にこなした
でもこの世界は一度ドロップアウトしたら終わり
どんなに才能があってももう二度と上には行けない
と。
彼女の訴えることはよく分かった。
プログラミングの世界は厳しいと、
私も分かってる。
悠香｢…要先輩よく言ってましたよねぇ？
″人間なんて信じちゃダメだ。親だって簡単に子供を捨てるんだ″って｣
小牧｢うん…僕の親がそうだったからね｣
そう言う小牧さんの顔は悲しそうだった。
小牧さんも、そんな過去が…。
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作者名：らぎ
| 作成日時：2021年3月5日 14時
