初恋なんて実らない。 (ページ16)

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ラーメンはおいしかった。
確かにおいしかったけど、やっぱり食い逃げだった。

油断してマントを脱いだところにお姉さんが来て、三人が窓から脱出。

そして今逃げてるところ。

「あーうまかった！！また来ような！」
「ああ！」
「ちょっと、食い逃げなんて聞いてないわよ！！」

とりあえず手持ちのお金を全部置いてきたのだが、足りているかどうかは知らない。
まあ、逃げるが勝ちだよね。後味悪いけど。

帰ったら拳骨二発ずつかな、なんてお仕置きを考えてるとそばにいた紳士が叫んだ。

「サボ・・・サボじゃないか！待ちなさい！家に帰るんだ！」

「おい、あいつ呼んでるぞ！知り合いじゃないのか！」

「・・・知らねぇ。人違いだろ！！」

そうはいうサボはやけに焦っていて。

「サボ。帰ったらちゃんと話そう」

そう言った声は届いたのか、少し俯いた。

・・・

「話せ」

「だから！！話すことなんてないってんだろ！」

「嘘付け！！じゃあ、さっきの男は何なんだよ！」

「・・・人違いだろ」

「サボ！！」

それでも言わない彼の前に座り、目線を合わせた。

「サボ、それは私達にでさえ言えないことなの？」
「っ、」

俯いた瞳に迷いが混ざる。

ごめんね、こんな心理戦はあまり使いたくなかったんだけど。

「言いたくないことって誰にでもあるよ。それなら無理して言わなくていい。

・・・さ、稽古しようか。朝来てない分ビシバシ鍛えるから覚悟してね！！」

そういって背を向けエースとルフィの背中を押すと、弱弱しい声が後ろで呟いた。

「・・・分かった」

「え？」

「言うよ。言えばいいんだろ！」

投げやりになった声に誘われるよう、彼の周りに座る。

ごめんね、サボ。

心の中で手を合わせた。