・ ページ7
・
私の涙を親指で優しく拭ってくれている景瑚の顔は、今にも泣きそうで
両手で彼の顔を優しく包みこむ。
佐藤「…泣いてないよ」
「泣きそうじゃん」
佐藤「……違うよ」
「違くないでしょ」
「なんで泣くのよ」
景瑚の頬を優しく両手で撫でながら聞く
佐藤「…………………好きな人が、泣いてるの、辛い」
佐藤「…しかも、他の男のせいで」
佐藤「…俺だったら、絶対Aのこと、泣かせないのになって」
あーあ、言っちゃったなんて言ってる景瑚
「……私のこと、好きだったの？」
佐藤「…………うん、初めて会った時から…ずっと」
佐藤「Aのことも、純喜くんのことも大切だったから、諦めたのに、」
佐藤「Aのこと、泣かされるくらいなら……無理矢理でも、奪っとけばよかった、」
そう言う景瑚の顔は、本当に辛そうで、見ていられなかった
「…………ねぇ」
佐藤「…ん？」
「………忘れさせてくれない？…純喜のこと」
たぶん意味は理解してくれたのだろう。すごく驚いた顔をしている。
佐藤「…だめだよ。そんなの。」
「ううん。忘れさせてほしい。……もう、思い出したくないんだ。純喜のこと。」
そう言って景瑚の方をみる。
景瑚は昔から、この表情の私に弱い。
涙目に上目遣いで、景瑚の服の袖をクイっと少し引っ張る。
佐藤「………………わかった。」
そう言うとお互い荷物をまとめ、近くのホテルに向かう。
お互いササッとシャワーを済ませ、景瑚が私を押し倒した。
「………景瑚」
景瑚の首に腕を回して、名前を呼ぶ
佐藤「…ん？」
「ごめんね」
「最低なことしてるのはわかってる」
「全部私のせいにしていいから」
「……………忘れさせて」
そう言って私からキスをする。
景瑚とのキスは優しくて、甘くて、どこか切ないキスだった。
「ぐちゃぐちゃにして、私のこと」
ごめんね、景瑚。
でも、私は最低な女だから、景瑚の優しさに甘えてしまうんだ。
だからさ、
こんな私のことは今日で忘れてね、景瑚
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 712人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らふちゃ | 作成日時：2024年1月26日 13時
