・ ページ2
・
自分の部屋に行って準備をしようと思ったら
「…なんもないな」
必要な荷物はスーツケースに入れてあるから、部屋には ベッドや本棚しかなかった。
「……虚しっ」
ドレッサーの上に置いてある写真を見て、ついそんな言葉が口から出た。
付き合った日に撮った写真だった。
文化祭の日、軽音部の出し物絶対見に来て！！なんて言われたから友達と一緒に見に来ていた。その時、純喜がギターを弾きながら歌っているのを見て好きになった。
文化祭終わったら会いたい、なんて連絡が来て行ってみたら告白されて付き合った。
今もまだ、そんな10年前のことが昨日のことのようにしっかりと記憶に残っている。
10年も一緒にいたのにこんなあっけなく終わるんだな、なんて沈んだ気持ちを吹き飛ばそうと新しくかったワンピースを着てメイクもいつもより力をいれた。
外に出て、デパートに向かっていた時
「…………あ、」
反対側の道に、嫌でも見つけてしまった純喜の後ろ姿。
横には小さくて可愛らしい女の子。腕を組んでホテルへと向かっている。
今しかないな、と思い信号を渡りながら純喜に電話をかける。
「………もしもし？」
河野「なに？」
女の子にちょっと待っててみたいなジェスチャーをして電話に出た純喜は少しめんどくさそうな声をしている
「今どこにいる？」
河野「会社やけど。さっき言ったやん。」
「ふーん。じゃあ私が見てる女の子と腕組んでホテルに入ろうとしてる人は人違いか。」
河野「はっ、えっ、」
慌てて腕を振りほどき、まわりをキョロキョロと見まわしている。少し離れた信号にいる私を見つけて、生気を失ったようにフラフラと私のところに歩いてきた。
河野「……………あ、の、これは、ちゃうねん…その、」
「いいよ。全部わかってるから。」
「別れよっか。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 708人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らふちゃ | 作成日時：2024年1月26日 13時
