似た者同士。 (ページ2)

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謎の石化から目覚めた時、一番に思ったのは。

「この世界で生きるのは無理だな」

ってことだった。

私はまともな教育なんて受けていないから何の知識も無くて。

日々ふらふらと生きていたから基本的な生活能力も無くて。

もう、最初からほとんど諦めてた。

だから、なんとなく生い茂る緑の上に寝そべって。
このまま自分の命が緩やかに終わりを迎えるのを待とうと、そう思っていた。

「君は…うん、石化からの復活者で、合っているかい?」

『…う、ん。』

目の前に現れた人間は、とても美しかった。

完成された肉体。
性別を疑ってしまう程の美貌。
低く、それでいて内側に響いてくる艶やかな声。
穏やかで、風格と少しの憂いを帯びた口調。

全てが、美しかった。
だから、私はその男から目が離せなくて。

じっと見つめ、観察し、気付いた。
その瞳の奥に、仄暗い闇と悲しみが浮かんでいることに。

『……ああ。』

「…俺の顔に、何か付いてるかな。」

『ううん。違う。すごく綺麗。綺麗で……可哀想。』

男が目を見開く。

表情が変化しても、男はやはり美しかった。

「………うん。真意は謀りかねるけど、初対面の人間に対して可哀想はどうかと思うよ。」

『そ、うなの?なら、謝る。ごめんなさい。』

素直に謝れば、男は面食らったような顔をした後、少し微笑んで私に手を差し伸べる。

「君は面白いね。俺は獅子王司。うん、君の名は?」

『…芽衣。癒月芽衣。』

強い、でもけして強引じゃない力の流れに任せて身を起こせば、足がよろめいて、彼の体に倒れこんだ。

『わっ…』

「大丈夫?まだ体が目覚めきってないんだろう。俺達の住むところまで背負おうか?」

『ありがと…でも大丈夫。ひとりで歩ける。』

軽々受け止める彼に、感心してしまう。

「そう、うん、ならいいんだ。こっちだよ。」

そして私は、彼の案内する場所へと歩き出した。