36.リープ前5 ページ36
*
「依頼は東卍の情報を他に流した奴は誰なのか、でいい?」
「おう。」
お盆にコップを2つ乗せた八戒くんにもう一度お礼を告げた。一口飲めばスッキリとした味の麦茶が口に広がった。
「今から調べよっか?」
「出来んのか?」
「私を誰だと思ってんの?機械に疎い三ツ谷くんと違ってパソコンは私のビジネスパートナーであり、お友達なんだよ。」
そう言いながらリュックからパソコンを取り出し情報を割り出す。結果なんて三ツ谷くんも知ってるだろうに。
「三ツ谷くん、金遣い荒くなった?」
「んな訳あるか。さっき八戒に今日の特売品買いに行かせた。」
こうも後ろめたい仕事をしてると、こうして軽口を叩いたりする時間が愛おしい。それこそ12年前に戻ったみたいに。
いや、過去の事を未練たらしく思い出すのは止めよう。「A」と優しい声が名前を紡ぐ。手は止めずに「何?」とだけ返す。
「お前、まともに寝てねェだろ。ちゃんと寝なきゃダメだろ。」
「オカンみたい。」
「A。」
先程よりも少しばかり強めの口調に押し黙る。あぁ、そうだったこの人は昔っからお節介なんだった。
「寝れねェのか?」
無言は肯定を表す。ため息をついた三ツ谷くんが「情報は後でいいから寝ろ」と一言。
「お前の事だから一日中パソコンと顔つき合わせてんだろ。目ェ悪くなんぞ。」
「視力落ちてないよ。」
深いため息がする。頭に乗せられた暖かな手に涙腺が緩くなるのが分かった。これだから兄貴属性は困るのだ。どうしようもなく甘えたくなる。ポタリと雫が落ちた。どうしてそれが出てきたのかは分からない。
逃げたい、逃げ出したい。苦しい。あの頃に戻りたい。
「ハルに、会いたいなぁ………ハルに会ったらね、今まで会えなかった分いっぱい抱きしめてあげるの。」
止まらない。いつもはコントロールするのなんて朝飯前のこの感情が、涙が止まらない。止まってなんかくれない。
「マイキーと、パーちんと、ペーやんと、スマイリーと、アングリーと……みんなに会いたい。みんなとね、また、たくさん話したいの。一緒にたい焼きも食べたいね。バイクで海にも行こう。年越しはみんなで集まってバカ騒ぎするの。」
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あう(プロフ) - 雪見大福さん» そうですね。心配してくれるって事はそれだけ自分の事を大切に思ってくれてるって事ですもんね。 (2021年8月3日 7時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - 夢主ちゃん視点で自分の感情が動いてたので心配されるって…嬉しいですなって思いました (2021年8月2日 21時) (レス) id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
あう(プロフ) - 紅さん» 更新を…ずっと待ってます…だと!?えー、嬉し(デレ)作品も気に入っていただけたようでありがたい限りです。頑張ります!頑張っちゃいますッ!! (2021年8月1日 22時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
紅 - この作品が好きです。更新ずっとまっています。応援してます。がんばってください (2021年8月1日 22時) (レス) id: 15d4b06566 (このIDを非表示/違反報告)
あう(プロフ) - kanraiさん» ありがとうございます!とても励みになります!! (2021年7月30日 22時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あう | 作成日時:2021年7月27日 17時