ゼルダ姫2 ページ27
｢それに比べて、私には何の才能もありません｣
｢……｣
｢彼はこんな無力な私の護衛などには不釣り合い。何より、こんな私のそばに居る彼が、彼その物が私のコンプレックスなのです｣
姫様は自分の奥底に溜まっていた鬱憤を全て打ち明けたようだった。
彼女のドレスを握る手に力が篭もる。
その手に被さるように、私の手を重ねると、彼女ははっという表情をしてこちらを見た。
｢厳しい事を言いますが｣
彼女の喉がゴクリと鳴る。
｢私にとって貴方はの行動は、逃げている様にしか見えません｣
｢……っ｣
｢古代遺物の研究をして、己の役目から逃れている……そう思います
ガーディアンはあの時のように、暴走すると止めるがやっとな遺物、いや、凶器です｣
ゼルダ姫はこの部屋から逃げるように私の手を離した。
｢それに｣
立ち上がって扉へ足を進める姫へ一言。
｢リンクというコンプレックスから逃げること、それはただリンクを毛嫌いしているようにしか見えません｣
ぐっと、ゼルダ姫の足元が止まった。
｢なら、私はどうすれば……！｣
ゼルダ姫の目には涙が溜まり、泣きじゃくる赤ん坊のように私の膝にしがみついた。
私の履物を握る手が、いっそう強まり震えている。私はその手を握ってゼルダ姫を抱き寄せた。
｢姫様の気持ちもよく分かります。私は両親がいない身なので｣
｢……え？｣
｢母親は私を産んだ時に他界しております｣
｢お父様は……｣
｢それは……｣
言葉を詰まらせた。
貴方のお父上に殺された、なんて口が裂けても言えるはずが無い。
きっとそれを聞いてしまうと、ゼルダ姫はもっと自分の身分やハイラル王国の姫という立場に、背を向けてしまうからだ。
あぁ、私は、気づけばこんなにゼルダ姫の事を、英傑の事を大切に思ってしまっていた。
｢ゼルダ姫様｣
話を逸らすように、名前を呼ぶ。
｢はい……｣
｢私はこれでお別れです｣
｢……な｣
しぃとゼルダ姫の唇に人差し指を押し付ける。
｢貴方には、リンクや英傑が、支えてくれる人がいます。どうかその人達を大切にして、頼ってください｣
｢貴方も私の護衛騎士なのでしょう……！？」
また涙をいっぱい目にためて、こちらを見上げた。
そんな目で見られると……
｢貴方には強く生きて欲しいんです。どうか、私の事など忘れてください｣
ゼルダ姫を少し押しのけ、私は立ち上がる。
｢……いや、嫌です……！｣
後ろから嗚咽が聞こえる。
私は窓を開け放って、窓のそばの机に片足を乗せた。
｢さようなら｣
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作者名：rikorisu | 作成日時：2020年3月25日 16時
