双子の姉は、妹を守る

5，那田蜘蛛山 肆 ページ7

冨岡に追い付く。
そこには十二鬼月がいた。


『(下限の伍……

…冨岡さん遅い
早く頸を斬ればいいのに
私が斬っちゃいましょうか)』

十二鬼月からは焦っているような匂いと音がした。冨岡がこちらに気付いて声をもらす。それに反応した十二鬼月が素早くこちらを向くが、Aには遅すぎた。
鬼の頸はもう胴体から落っこちていた。

冨岡「(相変わらず速いな。胡蝶は)」

殺した鬼から怒った匂いがする。
悔しさと怒りを混ぜた嫌な音。
だがその矛先はAじゃない。

ピッと血を振り払い、十二鬼月の怒りの矛先に目を向ける。

倒れている隊士がいた。
その腕の中には………鬼がいる。

鬼をかばっている……？

殺した十二鬼月の音が変わった。

深い、悲しみの匂いがする。


鬼はそのまま何かを求めるように、手を前へとつきだしながら隊士の方へ行き、ドッと倒れた。

隊士は十二鬼月の倒れた方へ手を伸ばすと、




ポンッと手を置いた。




優しい音が溢れだす。
涙がこぼれそうになるくらい温かい音。









カナエ姉さんと……同じ音。

一瞬、隊士とカナエ姉さんがかぶってみえた。




『(あ……鬼、倒さなきゃ)』







ーーーー


え？

隊士の腕の中の鬼。
その鬼から


人を喰らった匂いがしない。








もしかしてこの鬼の子……鬼を喰らってない……？

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