名探偵コナン人魚姫～NYの恋～Ⅱ (ページ8)

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No.58 ページ8

秀一は夕方の時と同様にA横抱きにするとリビングのソファに連れて行った。

『降ろしてちょうだい。それに傷口は側胸部なのよ。そんなにやすやすと男が見て良い場所ではないと思うのだけど。』

秀一「だが、今日、お前は貝殻を胸につけていた格好じゃないか」

『今は少し傷口が痛むからしてないのよ。そこまで言わせないで』

秀一「それはすまない。放っておけないんだよ…それに、傷口を診るだけだ」

『そんなこと言わないでくれる？』

秀一「そんなこととは何だ？」

『もういい。』

優しくソファに降ろされたAは秀一が背を向けている間に脱いで大事なところは手で隠していた。

秀一「少し沁みるぞ。」

秀一が傷口に消毒すると声にならない痛みが走った。

秀一「あんなに無理するからだ...」

『仕方ないじゃない、あそこであの子人質に取られるよりも私のほうが途中で反撃して逃げられるかもしてないって思っちゃたんだから。それに、女の子は肌に傷を作っちゃいけないのよ』

秀一「お前も女の子じゃないか」

『女の子なんて言える年齢でもないわ。それよりもういいでしょ？』

すると、秀一はAの傷口に優しくキスを落とした。

『っ！？な、なにした…の？』

秀一「お前も私に水無怜奈と会う前にしただろ？おまじないだ。」

『あ、あのねぇ…おまじないじゃなくて仕返しって言う顔しているわよ。』

秀一「そうか？れっきとしたおまじないだが」

『もう疲れた。おやすみなさい』

秀一「部屋まで送ろうか？」

『いい！』

秀一「ククッ、素敵な夢を姫…」

『姫はやめてって言ったでしょう？あなたもね』

火照る頬を隠すようにAは自分の部屋に戻りしっかりと鍵をかけ以前と変わった様子はないか周囲を調べた。

『特に変わった様子はなさそうね』

『(にしても、この間まで冷たい目をしていたのに急にあんな優しくされると、戸惑う)』

Aは秀一のことを考えてしまう度に、傷口とは異なる胸の痛みを抱えていた。
Aがこの痛みの原因を知ることになるのはすぐのことだった。

今日とった写真を見ながらAは人魚のことを考えて眠りに着いた。

Aは夢の中で悲しんでいた。手の届くところに愛しく感じる人がいるのに何度も何度も触れようとしても触れれないもどかしさ、心苦しさに涙しながら孤独という名の海で1人泳いでいた。

日の当たらない真っ暗な闇で美しい人魚姫は大切な人を想い儚く、消えそうではあるが美しい歌を奏でていた。