好きなんて、言えないよ。

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そらside







ものすごい勢いでAが俺の前を走り抜けてきた

一瞬だったけど、きっとあれは泣いてた






絶対エイジと何かあったんだ

それしか考えられない









そら「Aっ！待てって！」








振り返っても、Aは遠のいてた

走るのだけはいつも速いんだよあいつ







ああ、もう、と頭を掻きむしって

走り出した先に、水色の袋に入ったクッキーが落ちてた





ボロボロに割れたクッキーだけど

ちょっと不格好で、Aのだなってすぐわかった






きっとあいつ、えいちゃんのためにこれを…





割れたクッキーをポケットに入れて

またAを追いかけた









.









そら「Aっ！待てよ！」









ハアハア息を切らして、

やっとAの腕を掴んだ









そら「っ…A…。」









.









「えいちゃん、彼女いたみたい」









そら「えっ？」









彼女？えいちゃんに？







…彼女いるくせにAにあんな勘違いするような

ことばっかしてたのかよ、あいつ









「バカみたいだね、こんなに好きになっちゃって？

…彼女ぐらいいるよ、そりゃかっこいいもん」









そっと、Aは近くのベンチに腰掛けた

俺もAの隣に静かに腰を下ろした








「私、えいちゃんが初恋だったから…

目が合うとドキドキして、すれ違っただけでも何だか

嬉しくなって、毎日が楽しかったんだよ…？


でも、それはただ私が勝手に舞い上がってただけ？




……一緒に帰ってくれたのも……









…やっぱりえいちゃん何考えてるかわかんないやっ…」









勘違いするようなことして、Aを散々

好きにさせといて、彼女いる、とかふざけんな







Aをこんなに苦しめといて

おまけに、こんなに泣かせといて

ああ、もうムカつく。無理だ









.








.







.









こんな弱ってる時に、することじゃないのは

十分わかってる。けど抑えられなかった







俺はAの引き寄せて、

今Aが感じてる痛みを和らげるように

優しく優しく、抱きしめた。









「っ…そ…らっ…？？」









.









.









.









そら「…俺だったら、絶対に…

Aのこと、泣かせないのに。」









.









心に秘めてたこの言葉が出てきて

囁くように口から漏れていた

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