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「30分って…だ、大丈夫でしょうか、禪院さん…」
Aが廃病院へと踏み込んだ後。伊地知は不安げな表情をして慌てふためいていた。先程Aに話した通り、今回の任務は情報が穴だらけだった。窓が確認した時には1級相当と見做されたが、立地的にも条件的にも、それ以上の等級であることが懸念される。
応援を呼ぶかと問いかけた際、彼女は首を横に振った。しかし、本当に1人で向かわせてよかったのだろうか。いくら呪術師が人手不足だとしても、他の術師に頼み込んで同行してもらった方が良かったのではないか。
次から次へと嫌な考えが頭をよぎる。じっとしていることができず、車に乗ったり外に出たりを繰り返していた。最も、こんなことをしていても事態は変わらないのだが。
残り20分で呪霊の首が飛んでいるか、彼女の首が飛んでいるかのどちらかだ。
「禪院さんって、不思議な人だよなぁ…」
ふと、伊地知はそんなことを思った。初対面時や車内での会話など、言動や行動のひとつひとつに品を感じた。
しかしそれに反して、人間らしさが全く感じられなかったのだ。温度のない、氷のように美しい表情は、一瞬たりとも笑みを見せなかった。声にもまるで温かみがなく、まるで人形と会話しているような心地がした。
禪院家とは、そういうものなのだろうか。
踏み行ってはいけない一線を前にして、伊地知は考えるのをやめた。何はともあれ、彼女は丁寧な敬語で話してくれるし、時間もきっちりと守ってくれる。どこぞの最強より好感が持てた。それに、禪院Aは1級術師だ。心配しすぎるのも彼女に失礼だろう。
腕時計を見て時間を確認すると、約束の時間まで残り15分となっていた。帳の中は未だ音沙汰がない。最悪の事態にならないことを、ただただ祈るばかりだった。
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アキ(プロフ) - えもう最高すぎます……。続き楽しみにしてます😭💕💕 (2022年10月1日 10時) (レス) @page24 id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 最高です❗️ こうゆうのを待ってました‼️ (2022年8月11日 12時) (レス) id: 6c9eae5177 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - うわああめっちゃすきですこれ!!!更新止まってるみたいなのでよければ再開してほしいです(T_T) (2022年7月23日 18時) (レス) @page24 id: 44246302dc (このIDを非表示/違反報告)
ベリーショート(プロフ) - ミリカんさん» ありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (2022年4月23日 16時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
ミリカん - 最高に面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2022年3月22日 3時) (レス) id: 17b40665d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベリーショート | 作成日時:2022年1月5日 23時