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しばらくしても反応がないので恐る恐る顔を上げてみようとするが、直哉兄様の手のひらが優しく頭に乗っかった。
「こんな奴ら庇わんでええよ。全部筒抜けとったわ」
久しぶりに、直哉兄様の目を見た。視界いっぱいにうつるのは、屈託のない柔らかい笑顔だった。初めて向けられた表情に、どうしたらいいかわからなくなる。
直哉兄様は私から手を離すと、3人の兄たちに向かって近づいていく。
「自分ら大した才能もないのに、よぉ人のことやいやい言えたもんやなぁ。もっと言うたらAより能力ないねんで?こんなんが俺の兄貴なんて情けないわ」
一言一言。攻撃力のある言葉をつらつらと吐き出せるのも直哉兄様の特徴だ。当の本人は楽しんでいるようにも思えるが。
「何や?返す言葉もないんか?」
直哉兄様のトドメの一撃に、たじろいでいた兄たちは舌打ちをしながら踵を返した。直哉兄様に救われるという初めての事態に、私の頭は未だ追いついていけなかった。
ダサすぎやろ、と去っていった兄たちに吐き捨てた後、直哉兄様がこちらに戻ってきた。そこでハッと我に帰る。
「…申し訳ありませんでした」
「ええよ、口だけの奴らに言われっぱなしよりマシや。弟よりデキの悪い兄なんか居る意味ないやろ。首括って死んだらええねん」
直哉兄様の目つきが鋭くなる。昔からずっと嫌っている様子だ。
だが今回、どうして私の代わりに言い返してくれたのか不思議でたまらなかった。いつもなら、一方的に罵声を浴びせられる私を見て嘲笑っているはずなのに。
「直哉兄様…」
「ん?どないしたん?」
理由を聞くのは、野暮だろうか。
「…すみません、やっぱり何でもありません」
失礼しました、と再び頭を下げる。月明かりに照らされ、薄暗いはずの廊下はやけに明るく感じられた。
不意に、頬に手が触れた。突然のことにビクッと体が震えるが、近づけられた顔を前にしてすぐに固まってしまった。
「…やっぱ綺麗な顔やなぁ、A」
目を細めてじっとこちらを見つめる直哉兄様に、射抜かれたように体が動かなくなる。必然的に目を合わせる形になってしまい、視線を逸らすことができなくなる。
「ほんまに父ちゃんに感謝やな。可愛い妹がべっぴんさんに育ってくれて兄ちゃん嬉しいわぁ」
直哉兄様は愉快そうに笑いながら、私の頬から輪郭に沿って手を滑らせた。何故今日に限ってそんな言葉を口にするのか意味がわからない。今日の直哉兄様は変だ。
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アキ(プロフ) - えもう最高すぎます……。続き楽しみにしてます😭💕💕 (2022年10月1日 10時) (レス) @page24 id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 最高です❗️ こうゆうのを待ってました‼️ (2022年8月11日 12時) (レス) id: 6c9eae5177 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - うわああめっちゃすきですこれ!!!更新止まってるみたいなのでよければ再開してほしいです(T_T) (2022年7月23日 18時) (レス) @page24 id: 44246302dc (このIDを非表示/違反報告)
ベリーショート(プロフ) - ミリカんさん» ありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (2022年4月23日 16時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
ミリカん - 最高に面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2022年3月22日 3時) (レス) id: 17b40665d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベリーショート | 作成日時:2022年1月5日 23時