1級術師 ページ2
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「___A様?」
自分の名前を呼ぶ使用人の声によって目を覚ました。枕元には、昨晩寝落ちしてしまう前に読んでいた本が転がっている。
上体を起こした途端、じっとりと汗ばんだ衣服に気がつき、気持ち悪さから思わず顔を歪めた。
「随分と魘されていたようですが…」
「…大丈夫です。最近なかなか寝付けないもので」
心配なさらず、とだけ使用人に告げ、遠回しに退室を促した。使用人が出て行ったことを確認した後、着替えを持って急いで浴室へと向かった。
頭からシャワーを浴び、物思いに耽る。魘されたのは、昔の夢を見たからだ。大方、寝落ちした後手から滑り落ちた本で額を打ったのだろう。その衝撃で、昔のことを思い出したんだ。
思い出すことすら苦痛だが、決して忘れることなどできない。私の記憶と身体に刻み込まれた、永遠に消せないトラウマだから。
汗を流した後、急いで自室に戻って身支度を済ませる。今日は1級案件の任務があり、東京に向かわなければならない。もたもたしている場合ではない。
時間が押していたため朝食は遠慮しておいた。着物の上から羽織を身につけ、急いで玄関を飛び出した。使用人が気を利かせてくれたのだろう、禪院家の門を抜けると、道の脇に遠慮がちに停めてあるタクシーに乗り込んだ。
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新幹線と電車を乗り継ぎ、予定通り昼過ぎに東京駅に着いた。見慣れた黒い車と、スーツ姿の補助監督を見つけて歩み寄る。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。禪院Aと申します」
背筋を伸ばし、身体に染み付いた作法でお辞儀をする。補助監督の方も挨拶を返してくれた。
「とんでもありません、時間通りで本当に助かります!私本日の任務の補助監督を務めさせていただきます、伊地知と申します」
よろしくお願いします、とお互いに自己紹介を終え、車に乗って現場へ向かうこととなった。
「事前にお知らせした通り、呪いの発生場所は、都内にある廃病院です。禪院
手渡された資料に目を通しつつ、伊地知さんの声に耳を傾ける。廃病院という言葉を聞き一人納得した。1級相当の呪いが発生するのも無理はない。
「ここに来て何ですが…今回の件、情報がかなり曖昧でして。1級相当と配分されておりますが、あくまで予測で、おそらくは1級以上の呪いかと…」
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アキ(プロフ) - えもう最高すぎます……。続き楽しみにしてます😭💕💕 (2022年10月1日 10時) (レス) @page24 id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 最高です❗️ こうゆうのを待ってました‼️ (2022年8月11日 12時) (レス) id: 6c9eae5177 (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - うわああめっちゃすきですこれ!!!更新止まってるみたいなのでよければ再開してほしいです(T_T) (2022年7月23日 18時) (レス) @page24 id: 44246302dc (このIDを非表示/違反報告)
ベリーショート(プロフ) - ミリカんさん» ありがとうございます!ゆっくりですが頑張ります! (2022年4月23日 16時) (レス) id: 2d5afa7553 (このIDを非表示/違反報告)
ミリカん - 最高に面白いです!!更新楽しみにしてます!! (2022年3月22日 3時) (レス) id: 17b40665d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ベリーショート | 作成日時:2022年1月5日 23時