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29話 快斗side ページ29

快斗「・・・そうだ、これは私の目当ての宝石ではなかったので、お返ししますね」

 俺の顔をジッと見つめたまま動かないAの手に、名残雪(リメイニング・スノウ)を握らせると、彼女はやっと俺から視線を外し、手の中のアクアマリンを見つめる。

A「・・・綺麗、ですね・・・」

快斗「ええ・・・お嬢さんによく似合いますね」

 数ある宝石の中で、Aに一番よく似合うのはやはりこのアクアマリンだと思う。・・・目の色がエメラルドグリーンだから、エメラルドもよく似合うが・・・海のように寛大な心を持ち、聡明な彼女にはアクアマリンがふさわしい。そんな意味を込めて言うと、Aはわずかに目を見開き、そしてさらに俺との距離を詰めてくる。・・・さすがにこれ以上は・・・

快斗「ダメですよお嬢さん、見知らぬ男にこんなに密着しては・・・」

 ・・・まあ、実際見知らぬ男ではないし、Aから見た俺が名探偵として写っているのなら彼女にとっても見知らぬ男ではないわけだが・・・もう少し危機感持てよ・・・と思いながら、彼女の頭に触れ、優しく撫でる。

A「・・・やっぱり・・・」

 何かを確信したように呟いた彼女は、穴が開くかと思うほどにじーっと俺を見つめ、やがて悲しそうに呟いた。

A「・・・快斗君、だよね・・・?」

 何で・・・その言葉が脳内を埋め尽くす。名探偵だと勘違いしているのではないかとは思っていたが、まさか俺だとばれるなんて思ってもみなかった。付き合いが長いとはいえ、滅多に逢うことはないのに・・・ほぼ毎日のように顔を合わせている青子でさえ気づかないのに、どうして・・・

A「私にアクアマリンが似合うって言ってくれるのも、こんなに優しく頭を撫でてくれるのも・・・快斗君だけだよ・・・」

 私の推理、間違ってるかな・・・と不安げに呟くAを見て、これ以上隠し通すことは不可能だろうと直感する。・・・いや、白を切ればできないことはないのだが・・・惚れた女にこんな表情をされて嘘をつき続けられるほど俺はドSじゃない。

快斗「確信を得たのは、頭の撫で方なんだろ?・・・まさかそんなのでバレるなんて、思ってもみなかったよ」

 大正解だ、と呟きながらシルクハットを外し、Aに顔を見せると、子どものようにまぶしい笑顔を浮かべる。・・・俺がマジックを披露したときにいつも見せてくれる表情。・・・飽きもせず毎回喜んでくれる。そんなところが好きなんだよなぁ・・・

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フランドール(プロフ) - 黒猫さん» ありがとうございます!!ただいま新生活に適応中で執筆する時間が取れず、申し訳ありません…落ち着き次第更新するので、楽しみにしていてください!! (4月14日 21時) (レス) id: 93fb40e7a7 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 続きが気になります!更新楽しみにしています!!!素敵な作品を本当にありがとうございます! (4月14日 20時) (レス) id: 3989c699fa (このIDを非表示/違反報告)
フランドール(プロフ) - ジジさん» コメントありがとうございます!!最近思うような文章が書けず、モチベが下がっているので励みになります!!自分がどのように執筆していたのかを模索中なので、待っていてくださると嬉しいです!! (3月19日 7時) (レス) id: 93fb40e7a7 (このIDを非表示/違反報告)
ジジ - 素敵な作品をありがとうございます!更新楽しみにしてます!応援してます✨ (3月18日 18時) (レス) id: f632db4eea (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - いつまでも待ってます!更新楽しみにしています!応援しています♡ (2月22日 0時) (レス) id: 8fa475efd3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フランドール | 作成日時:2020年5月3日 15時

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