Good Old Days 042 ページ8
ボロボロと大粒のそれが頬を伝っていく。ああ駄目だ、フィクションみたいに奇麗に泣けない。鼻水が出そう、でもここで啜ったら間抜けだよね。
宮地さんは私の目尻に溜まった涙を拭った。
「――日田A、よく聞け」
私の目線に合わせて腰を屈める彼は、言葉を紡ぐ。
「男ばっかの中で、――特に夏からはお前1人でマネージャー業を全部やってくれた。本当に、助かった。来年も、再来年も、
「ゔゔゔ……は゛い゛」
隣にいる馬鹿2人に目を遣る。
「お言葉ですが、宮地さん。高尾とAはともかくオレのことを馬鹿呼ばわりとは心外です。心配には及びません。何故なら――」
体育館の1・2年席をぐるりと見渡してから、真太郎は私と和成と目を合わせて、口角を緩く上げた。
「来年、秀徳には経験を積んだ現1・2年と新1年と、中谷監督と、祐也さんと、高尾と、オレと、それからAがいますから」
だから心配なんだろーが。木村さんはそう呟いた。大坪さんが、大きな声を張り上げた。
「……さあ! 宮地とAにばかりいいところを持っていかれたが、オレ達だって言いたいことが色々あるんだ。今の時点で既に式は予定より1時間遅れている。そこでだ」
彼は、ニヤリと笑う。
「もう、開き直ってどんどん押してこう! 今更巻いても間に合うズレではない。1時間遅れても2時間遅れても一緒だ。言いたいことがあるやつ、どんどん壇上に上がってくれ。今なら何言ってもいいぞ」
いいですよね監督、と目で訴えるキャプテン。中谷監督は呆れたように溜息をついた。でもそれは、仕方がないねこの子らは、という温かい呆れだった。
「ではまず、私から言わせてもらうよ」
監督は、舞台袖にある階段をゆったりとあがってきて、マイクを取った。
「まず、緑間。お前新学期から1日のワガママなしな。上級生としての示しが付かんだろう」
「……善処します」
おお、あの緑間が素直に……! 体育館からは感嘆が漏れる。「オレらの現役の頃にあれくらい素直だったら良かったのに」という恨みも聞こえてきて思わず笑う。
そのあと監督は独特のペースで部員達に駄目だししていき、はてには引退した3年にまで被害が及んだ。
言うまでもないことだが、私と和成も「監督をおちょくるのはやめなさい」と怒られた。
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ふなふね(プロフ) - コメントありがとうございます……! すごく力になります! 作者はこれから多忙になることが予想されるのでそれまでにガンガン更新していきたいと思うので見捨てずこれからもこの作品をよろしくお願いします! (2023年3月19日 8時) (レス) id: 7172b187f5 (このIDを非表示/違反報告)
和‐カズ‐(プロフ) - ふなふねさんの、この作品めっちゃ好きです!これからも更新頑張ってください! (2023年3月19日 7時) (レス) @page19 id: 5655eee53b (このIDを非表示/違反報告)
みかん - やっぱり作り直すのやめて、パスをもう自分でもメモしないとわからないやつにかえました!お互いに頑張りましょう! (2022年6月27日 16時) (レス) id: 1980a86d42 (このIDを非表示/違反報告)
ふなふね(プロフ) - みかんさんヘ―ありがとうございます。お互い頑張りましょう。水無月歌恋さんへ―目を通してくださりありがとうございます。励みになります。 (2022年6月26日 20時) (レス) id: 350748c4de (このIDを非表示/違反報告)
みかん - はい!私が占いツクールで小説書こうと思ったのふなふねさんのおかげですから!後、私の駄作を読んでくださってるんですか!ありがとうございます!荒らされた件でもう一度作り直しますのでまっていてください! (2022年6月26日 15時) (レス) id: 1980a86d42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふなふね | 作成日時:2022年4月21日 21時