【オリジナルBL】ふたりのよる (ページ4)

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「ところでA、どこに行っていたんだ」
「公園に」
頭上から、喉の奥を鳴らすような低い笑い声が響いた。
「好きだな、Aも」
「うん。夜の空気はきれいだから」
「次は俺も一緒に行っていいか」
「もちろん」
Aは、鈴はずっと変わらないな、と思う。
体格や声は多少変わりはしたが、身に纏う静謐な空気も、大人しい知性と倦怠感をたたえた瞳も、言葉を選ぶようなゆったりとした口調も、ずっとそのままだ。
「A」
呼ばれて見上げると、鈴と目が合った。
鈴は瞳を伏せ、顔を近づけてきた。Aも沿うようにそれに倣う。
何度二人、こうしたことだろう。
重ねられた唇から、鈴のたくさんの愛を受け取ってきた。そしてたくさんの愛を伝えてきた。
「鈴、…」
鈴の舌が唇を割って入ってきた。
ざらつく舌の生々しい感触と、よく知っている鈴の唾液の味。背筋に、ぞくりと甘いものが走るような感覚。
何度も鈴の舌がAを捕らえる。絡まる度、攻められる度、Aはあまりの気持ち良さに脳の髄までが溶かされるようだった。
キスをしたままで、Aの服の下に鈴の手が差し入れられた。Aより少し大きく形の良い掌が、背中から腰にかけてを撫でる。触れるか触れないかのぎりぎりを這う指がくすぐったかった。
ぐい、と鈴に頭を寄せられ更に深くキスをする体勢になり、Aは腰が砕けそうになった。
「…ふっ、ぅ……」
鈴は存分に愉しんでから、Aからゆっくりと唇を離して、再び唇が触れるか触れないかの距離で尋ねた。
「いつから、出歩くようになった」
Aは息も絶え絶えだった。
「最近…」
「夜ばかりだな」
「夜が好きなんだ」
「どうして」
「静か、だから」
Aは静かなものが好きだった。騒がしいのが嫌いだとかいう訳ではない。ただ単に静かなのを好んだ。
だから夜が好きだった。だから鈴が好きだった。
「昔からそうだな」
「…鈴。それより」
Aは堪らなくなって、自らのシャツの襟に指をかけてねだった。
「はやく、…」
鈴はおかしそうに言った。
「悪い」
鈴に手際よくシャツのボタンを外されていくのを、Aはただぼうっと眺めていた。上から下まで至極丁寧に脱がされたAの体を、鈴はじっと見つめてきた。
鈴はいつも、抱く前にAの身体をすみずみまで観察するように見てくるのだ。