初めまして 七項目 ページ9
暗い意識の底から目を覚ますと、そこには白い天井が広がっていた。
慌てて上半身を起こし、周りを見渡す。すぐ隣のベッドでは一期一振が眠っており、自身の枕元には本体が立て掛けられていた。
次に、己の手を見やる。先ほどまで血にまみれていた筈の指先が、元の色白なものに戻っている。身体の痛みも感じなかった。
そしてもう一度、部屋の捜索を開始した...が、いくら探しても目的の人物は見つからない。
俺はとうとうベッドから足を出して、立ち上がろうとした。
「主...」
「やっと、お目覚めかい?」
静かだった部屋に、凛とした声が響いた。
俺は反射的に声のした方向...自身から向かって左方向にある出入口へと視線を向ける。自然と身体が身構えていた。
そこには一人の女性が立っていた。確か、俺たちの傷を治した人物だったか。
治療時(あれを治療と言って良いのか分からないが)のことは思い出したくなかった。
「君は...」
「ああ、自己紹介がまだだったね...妾は与謝野、与謝野晶子だ。あんたらの傷は全て治っているはずだよ...まだ、安静にしてないといけないけどね」
そう言って黒いスカートを翻し、ベッドの横に置かれていた椅子へと腰掛ける女...与謝野に、俺は窓の外を見やる。
雲一つない、青空が広がっていた。
「...主は?」
「ん?ああ、あの子ならまだ寝てるよ。この部屋の、すぐ隣だ。ナオミが傍にいるから...」
「...っ、」
主の居場所を聞いて、俺は居ても立っても居られなくなった。すぐにベッドから立ち上がる...しかし、それは叶わなかった。足に上手く力が入らなかったのだ。俺は身体は、再びベッドへと舞い戻ってしまう。小さく舌打ちをした。
「...あんた、人の話を聞いてたのかい?安静にしてろと言った筈なんだが?」
「主の傍に...早く...!」
「...ったく」
歩けないのなら這ってでも...と、俺はもう一度上半身を起こす。
しかし、それは与謝野の手によって阻まれた。俺の身体を軽く押し、ベッドに寝かす。いくら力が入らないとは言え、こうも簡単に...それも女性の手によって倒されてしまうのは中々に堪えるものがあった。
「さっきも言ったが、あの子はもう大丈夫だ。今あんたに出来ることは、一刻も早く体力を回復させること...心配しなくても、あんたらの大事なあの子は取って食いやしないよ」
「当然、だ...」
リズムよく叩かれる腹部。俺は再び沈んでいく意識に抗うことが出来なかった。
「おやすみ...」
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ファーストMe - めちゃくちゃ面白いです(о´∀`о)更新頑張ってください! (2017年2月25日 15時) (レス) id: 4d48430878 (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» うぁぁ(自慢)だなんて!嬉しい限りです!もちろん、乗せて頂くのはOKです☆ありがとうございます(o^^o) (2016年12月30日 23時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» いえいえ!描いて頂き、本当にありがとうございました!確認次第、小説の方に載せさせて(自慢)頂きたいのですが...よろしいでしょうか? (2016年12月30日 20時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» あ、はい!そうです。杏仁豆腐さんのボードにURL貼らせて頂きました。説明不十分ですみません汗 (2016年12月30日 20時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» ありがとうございます!えーっと...ボードの方でよろしいのでしょうか? (2016年12月30日 19時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
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