初めまして 五項目 ページ7
コピー機に黒電話、山のように積みあがった書類など...仕事の道具で溢れていた事務室で、安堵の息が聞こえてきた。
目の前で膝から崩れ落ちた青年二人に、与謝野は母親のような温かい笑みを浮かべる。小さな嗚咽の音が、耳に響いてきた。我慢していたのであろう...涙が床に零れ落ちていった。
「主が...助かった...?」
「ああ。今はまだ眠ったままだが、そのうち目を覚ますだろう」
「...っ、ありがとう、ございます!」
「主は...主はどこだ!?」
崩れ落ちた二人と視線を合わせるようにしてしゃがんだ与謝野に、白い髪の青年が縋り付いた。自身の腕を握るその手は、とても小さく震えている。頬を伝う涙は止まることを知らず、次々と溢れ出す。
血が付着しているにも関わらず、与謝野はその手を上から握りしめた。
「落ち着きな...あの子の居場所を教えるのもいいが、それはあんた等の治療が終わってからだ。気持ちは分かるが、妾にもプライドってのがある...いいな?」
「...っ、分かった」
「主殿...」
逸る身体をどうにか抑え込み、しぶしぶと頷いた青年たち。与謝野はにこりと笑い、二人の手を引いて部屋の外へと連れ出した。そしてそのまま自身の部屋...治療室へと足を進める。
二人は俯き加減に後ろから着いて来ていた。少女の怪我もそうであったが、彼らにも目立つ外傷は山のようにある...それも、その全てが鋭利な刃物による切り傷。
「あんた等は...一体、何者なんだい?」
そう言いかけた言葉を無理やり押し込める。それを聞くのは今じゃない。
今はただ、一刻も早く彼らの傷を治すこと...それが医者としての、自分のやるべきことだ。
「着いたよ...さぁ、入った入った!」
仕事場の扉を開け、黙って着いて来ていた二人を中に押し入れる。
与謝野は部屋の壁に立てかけてあった自前のノコギリを手に持ち、肩に担ぎ上げた。
「...さぁ、手術の始まりだよ。お二人さん、覚悟はいいね?」
ニヤリと笑う医者が一人。
今日も今日とて患者を治す。
470人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ファーストMe - めちゃくちゃ面白いです(о´∀`о)更新頑張ってください! (2017年2月25日 15時) (レス) id: 4d48430878 (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» うぁぁ(自慢)だなんて!嬉しい限りです!もちろん、乗せて頂くのはOKです☆ありがとうございます(o^^o) (2016年12月30日 23時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» いえいえ!描いて頂き、本当にありがとうございました!確認次第、小説の方に載せさせて(自慢)頂きたいのですが...よろしいでしょうか? (2016年12月30日 20時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» あ、はい!そうです。杏仁豆腐さんのボードにURL貼らせて頂きました。説明不十分ですみません汗 (2016年12月30日 20時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» ありがとうございます!えーっと...ボードの方でよろしいのでしょうか? (2016年12月30日 19時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ