初めまして 十三項目 ページ15
暫く続いていた銃撃音が止んだ。
瓦礫の後ろで其れを聞いていた俺は、お気に入りの帽子を被り直してから立ち上がる。少しだけ顔を覗かせてみれば、敵マフィアの幹部やら手下連中やらが倒れているのが視界に入った。
俺は耳許の通話機器を操作して、自身の部下に作戦成功の報せを伝えてやる。
「制圧完了...引き上げるぞ」
俺たちは今総領の命により、敵対している組織の壊滅作戦を行っていた...本当のことを言えば、行っていたのは主に部下であって、俺はこうして指示を出していただけなんだが。
空気中を舞う土煙に噎せながらも、服に付着していた塵を払う。折角の一張羅が汚れてしまい、小さく舌打ちをした。
...刹那、何者かの気配がいきなり現れた。
俺は敵の生き残りかと疑いながら周りを見回し、何時でも殺れるよう戦闘体勢を整える。
指示していただけに、体力は有り余っていた。
「...さぁ、出てきな。俺が相手になってやるよ」
ペロリと舌を舐め、相手を挑発するような言葉を述べたその時。背後から発せられる殺気に、俺は勢いよく足を振り抜いた。周囲に立ち込める茶色い土煙が、一気に晴れていく。
目の前に露になった其れに、俺は息を飲んだ。
「なんだ...手前は...」
此方を見据える冷たい双眼。
その、見事な巨体を覆う黒い影。
妖しく光る、鋭利な刃物...日本刀だろうか。
「生き残り...じゃねぇな。手前、何者だ?」
「...ゴ」
「あ?」
「...トキノ...マヨイ、ゴ」
おぞましい声が耳に入ってくる。時の迷い子?なんだそりゃ、知らねぇな。
顔をしかめ、再び口を開いたその時である。
「...うおっ!?」
目の前の其れが、予備動作もなくいきなり刃を振り抜いて来た。俺は持ち前の反射神経を用いて何とか交わす。つい先ほど頭があった場所を、血生臭い刃が弧を描いていった。
「チッ...いきなりかよ!」
追撃を避け、懐に潜り込んだ俺はがら空きになっている腹部の辺りに拳を叩き込む。
それも、一発ではない。
「オラオラァ!」
四発、五発と次々に殴り付ける。
敵が得体の知れない以上、彼方が何かをしてくる前に叩きのめす。闘いの基本であった。
最後を蹴りで締め、奥へとぶっ飛ばす。俺は一息吐いてから服を払った。
「...ったく、手間掛けさせやがって」
地面に落ちてしまったジャケットを手に取り、くるりと身体を反転させて出口へと足を進める...が。
「...マヨ、イゴ」
「...まだ、生きてンのかよ...」
蒼い双眼が、光っていた。
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ファーストMe - めちゃくちゃ面白いです(о´∀`о)更新頑張ってください! (2017年2月25日 15時) (レス) id: 4d48430878 (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» うぁぁ(自慢)だなんて!嬉しい限りです!もちろん、乗せて頂くのはOKです☆ありがとうございます(o^^o) (2016年12月30日 23時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» いえいえ!描いて頂き、本当にありがとうございました!確認次第、小説の方に載せさせて(自慢)頂きたいのですが...よろしいでしょうか? (2016年12月30日 20時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» あ、はい!そうです。杏仁豆腐さんのボードにURL貼らせて頂きました。説明不十分ですみません汗 (2016年12月30日 20時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» ありがとうございます!えーっと...ボードの方でよろしいのでしょうか? (2016年12月30日 19時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
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