初めまして 十一項目 ページ13
その男は一つしかない出入口の前に立っていた。
腕を組み、どこか掴み所のない笑みを浮かべてこちらを見てきている。突然の来訪客に、鶴丸と一期は腰に滞納していた自身の獲物に手を掛けて警戒している。抜刀して斬りかかっていないところを見ると、彼に害はないのだろう。
...まだ、信用はしていないようだが。
「私は太宰治。君たちが海岸沿いに倒れていたときは驚いたよ。随分と回復したようだね」
『海岸、沿い?』
男の名前に少しだけ反応するも、それは続けて述べられた言葉によって遮られた。私はゲートに飛び込む前に気絶してしまったため、そのことを知らない。唯一分かっているのは、ここが政府の救護室でないということ。
私は未だ太宰に訝しげな視線を送っている鶴丸に、どういうことか訳を聞いてみる。彼は太宰の言っていることは事実であると頷いていた。
「ああ...俺たちが本丸から君を遠ざけるために飛び込んだゲートの先は政府ではなく、何故か太宰のいう海岸沿いだった」
「そこで、彼らと出会ったのです」
『なるほど...』
こりゃあ驚いたぜ...と肩を竦める鶴丸に、一期が太宰に視線を向けながら付け足した。
一期に複雑な視線を送られる太宰だが、本人は気にしていないようで。あの胡散臭い笑みを崩さなかった。
「本丸、ゲート、政府...気になることは沢山あるが、まずはお嬢さんの名前を聞かせてくれないかな?勿論、君たちもね?」
太宰の言葉に、私はまだ名乗っていなかったことを思い出す。これでは礼儀になっていない。
『これは、申し訳ない...私の名は椿。訳あって本名は言えないことになっていてな...悪いが、偽名で勘弁してくれ』
私は咄嗟に審神者名の方を口にした。
太宰は驚いたように目を見開くが、それは一瞬で。次の瞬間には再び、あの食えない微笑みに戻っていた。次に、鶴丸がおずおずといったように口を開く。
「...俺は」
「俺は?」
「...俺は、鶴丸。ある...椿のボディーガード的なあれだ」
「うん?」
何故かドヤ顔を決め込んでいる鶴丸に、流石の太宰も驚いたようで。ポカンと口を開けている。これには私も驚いた。太宰と同じく、開いた口が閉まらない。私は一期に助けを求めるため、彼の方に救護要請を出す...が。
「...私は、一期。鶴丸殿と同じく、椿殿の守護者的なあれですな!」
私の救護要請に気付かず、早々に裏切ってくれた一期。太宰の「君たち、本当に何者...?」という視線が痛い。
『なんか、悪いな...』
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ファーストMe - めちゃくちゃ面白いです(о´∀`о)更新頑張ってください! (2017年2月25日 15時) (レス) id: 4d48430878 (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» うぁぁ(自慢)だなんて!嬉しい限りです!もちろん、乗せて頂くのはOKです☆ありがとうございます(o^^o) (2016年12月30日 23時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» いえいえ!描いて頂き、本当にありがとうございました!確認次第、小説の方に載せさせて(自慢)頂きたいのですが...よろしいでしょうか? (2016年12月30日 20時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
神歩(プロフ) - 杏仁豆腐さん» あ、はい!そうです。杏仁豆腐さんのボードにURL貼らせて頂きました。説明不十分ですみません汗 (2016年12月30日 20時) (レス) id: 64d455b767 (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐 - 神歩さん» ありがとうございます!えーっと...ボードの方でよろしいのでしょうか? (2016年12月30日 19時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
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