19話 破片 ページ21
『おらおらおらぁ!!』
右手に持った獲物を振り回し、襲い掛かってくる刀剣たちを地に沈めて行く。
足元には、折られたのであろう刃の破片が放置されていた。
私はそれを、なるべく踏まないようにしながら疾走していく。
そのためか、非常にバランスをとるのが難しい。
「ご主人様!!」
『うわっと!?』
亀甲の声に慌てて頭を下げてみれば、今さっきまで自身の頭があったところを敵の切っ先が孤を描いて通って行ったのが確認できた。
これぞまさに危機一髪だな、うん。
「竜堂はん、ちゃんと足付けな危ないで?」
背中合わせになった明石が声を掛けてきた。
斬られたのか、彼の頬を伝っている赤い血が目に入る。
思わず目を背け、視線を前に戻した。
『...だって、嫌なんだよ。
折られた短刀踏むのが...神様を、踏むのが』
「...」
ポツリと呟いた私の言葉が聞こえたようで、明石は何も言わずに斬りかかってくるへし切長谷部の刃を受け止めた。
ガキンッという金属音を聞きながら、私もその場から離れて次の相手の元へと掛けて行く。
畳の上で、きらりと輝く破片を視界の隅に映しながら。
・
「...っ!」
『物吉!!』
突然、それは起こった。
大和守安定の刃を押し返し、つい先ほど地を転がっていった隊員の元へと駆け寄って行く。
彼に向って獲物を振り下ろそうとしていた一期一振の刃を受け流し、その腹部を柄の先で強打した。
気絶し、力なく倒れてくる一期を抱き留めてそのまま畳の上に寝かす。
『物吉、おい!!』
「...うるさい、ですよ」
腹を抑えて蹲る物吉の肩を掴み、思い切り前後に揺さぶった。
左肩から流れ出てくる血液が痛々しい。
顔を歪めながら、いつものようにちっともロイヤルではない言いぐさで返してきた物吉に安堵の息を吐く。
私は自身の羽織っていた羽織をビリリと引き裂き、出血がひどい彼の左肩に巻き付けた。
「...なんだ。まだ生きておったのか」
凛とした声が、部屋中に響き渡った。
その強大な霊力に、相手を気絶させようと刃を振りかざしていた太鼓鐘の動きが止まる。
明石や亀甲も動きを止めてこちらに視線をやっていた。
一瞬、この場の時間が止まったような気がした。
「殺せたと、思ったのだがなぁ...」
にこりと妖美に嗤う。
瞳に、三日月の紋を映したその青年___
『...三日月、宗近』
天下五剣が一振り、血の滴る刃を持ってそこに存在していた。
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ハルヒ(プロフ) - 臨兵闘者皆陣烈在前…アカン妖界ナビ・ルナしか浮かばんかった…そしてこの小説がとても好きです…ゆっくりでいいので更新待ってます…杏仁豆腐さん大好きです…(* ̄ii ̄)ハナジブォォォ← (2017年11月28日 14時) (レス) id: 852ed5590a (このIDを非表示/違反報告)
杏仁豆腐(携帯)(プロフ) - アッシュさん» その点に関しては申し訳ありませんでした。只今設定の方を載せましたので、何か不便な点がございましたら言ってください。 (2017年11月6日 22時) (レス) id: c00500378b (このIDを非表示/違反報告)
アッシュ(プロフ) - 設定無いのですか?初っ端から話が始まって何が何だか分からないです… (2017年11月6日 21時) (レス) id: 780afa92f9 (このIDを非表示/違反報告)
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