過保護が十三振り ページ14
『はぁ...』
本日何回目になるのか分からないため息を吐きながら、目の前に整頓されている書類の束に目を通していく。
しかし、そんな単純な動作も何の気晴らしにもならないようで。
間を置かずにまた、それはそれは大きなため息を吐くのであった。
「我が姫君よ。
この書類はどこを確認すればいい...手取り足取り、教えてはくれないか?」
「主の手を離せ見習い。
その程度のことなら、俺か長谷部に聞けばいいだろう...主の手を今すぐ離せ」
「主、部屋を移動しましょう。
あいつと同じ空気を吸ってはいけません」
...そう、お察しの通りだ。
書類の確認を急がみながら、何故か私の手を掴んでくるストーカー見習い...玲。
その手をいち早く払い除け、私と玲の間に無理やり割って入ってくる本心を隠せていない巴形。
その間に、私の背中に手を添えながら別の部屋に移ることを勧めてくるのは長谷部である。
只でさえ狭い部屋なのに、体格の大きな彼らのせいで何時もより大きく感じられる人口密度もため息を吐く原因の一つであった。
早く仕事を終わらせて短刀の天使たちに癒されたい...切実に。
こんなむさ苦しい空間もう嫌だ。
見習いを本丸に受け入れてから一週間...いや、受け入れたと言うよりは向こうから無理やり入ってきたのだが。
流石の私も鬼ではないので、全く快くではないがこうして審神者業のいろはを教えてやっている。
鍛刀や部隊編成のコツ、刀装の作り方、刀剣たちとの馴れ合い...
「ははは、見習いの小童よ。
主が困っているではないか...そもそもお主、先程から付きまとい過ぎだぞ?」
「三日月宗近か...何、それは貴方にも言えることなのではないか?
その、我が姫君の胴体に纏わりついている腕は何なのだ?」
「俺は主に用があってだな...これから俺の部屋で共に過ごすのだ。
だからお主は邪魔なのだ今すぐ散れ」
『...馴れ合ってるのかなぁ〜!!?』
片や抜刀、片や式術の構えで睨み合いながら火花を散らす天下五剣と見習い。
どうでも良いが、私を挟んで白熱するでない。
ここから抜け出そうにも、三日月に腰を掴まれているため身動き取れずにいるのだ。
そもそも三日月、お前そんな荒っぽい口調じゃないだろう。
『...もう、頭痛い』
最早掴み合いに発展しそうな彼らを視界の隅に捉えながら、私はふらりとその場に倒れ込んだ。
...そう、倒れ込んだのであった。
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