15話 涙の理由 ページ17
瞳に溜まる涙を拭い、一つ息を吐いてから意を決したように秋田は話し始めた。
自身の膝の上で、その小さな拳を震わせながら。
「...僕は、主君の初鍛刀だったんです。
初めて出会ったあの日、誓ったんです...何があっても、あの方をお守りすると。
...なの、に！」
先ほど拭い取った涙は、止まることを知らないようで。
ポロポロと溢れ落ちてくるソレは、秋田の座っているすぐ側の畳を濡らす。
肩を揺らしながら小さな嗚咽を溢す秋田に、薬研もAも、何も言えなくなっていた。
それは、鶯丸も鶴丸も同じであった。
「僕は折れた...！
誓ったのに...約束、したのに...！！」
「秋田...」
遂には顔を覆い、泣きじゃくってしまう秋田。
その小さな兄弟の背中を、薬研は優しい手付きで何度も擦ってやった。
秋田は微笑んで礼を言い、薬研に向けて大丈夫だいうことを告げてから更に続ける。
「約束を守れなかった僕を、主君はきっと許さないでしょう。
こんな駄目な僕を、主君は失望したに決まって...！」
『...それは違うッスよ』
どんどん自虐的になっていく秋田の言葉を、遮る声が一つ...Aであった。
秋田はパッと顔を上げ、自身の言葉を遮った主を涙で濡れた瞳で見詰める。
その白い頬を、一筋の雫が伝っていった。
『君の主は、君のことを失望するワケがない。
大事に思ってるッスよ...今でもね？』
落ち着けていた腰を上げ、秋田の側まで移動してその頭を撫でるAの表情は、とても柔らかいものであった。
彼の、これまで見てきたどの表情とも違うそれに、鶴丸は目を見開く。
自身の頭に乗せられた色白な手に、秋田は驚いたように身を固まらせた。
「...どうして、そんなこと？」
『君は、元居た本丸の初鍛刀だ。
審神者に成り立てで、右も左も分からない状況の主の元に、一番早く顕現した短刀...確かに、君は約束を守れなかったッスよ？
...でもね？』
そこで一度区切り、Aは再び微笑みを浮かべ直した。
その、子を見る親のような笑みに、秋田は強張っていた肩の力を抜いて先を促すかのように小首を傾げる。
『...一番早くに出来た“家族”を、そんなことで失望出来るワケがないじゃないッスか』
「...っ！」
柔らかい桃色の頭を撫で付け、ニッと歯を見せて笑うAは、何処か儚くて。
堰を切ったように泣き付いてくる小さな少年の身体を、彼は何時までも抱き留めていた。
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あ - 更新待ってます (2017年11月29日 1時) (
レス) id: e1ae95dbc2 (このIDを非表示/違反報告)
柚希 - 面白いです！続きが気になります。更新楽しみに待ってます(゜∇^d)!!(゜∇^d)!! (2017年4月30日 10時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
ぬっこりアロエ - 1でｯ!!!!! (2017年3月21日 20時) (レス) id: 0d3966aac5 (このIDを非表示/違反報告)
トゥクルカ(プロフ) - 1でお願いします！続き楽しみにしてます！ (2017年3月20日 11時) (レス) id: 77391b8609 (このIDを非表示/違反報告)
ヴェルさん(プロフ) - 2が良いです。鶴丸にはホワイト本丸の味を知ってほしいです…ブラックな家族が顕現したら耐えられないとも思いますし... (2017年3月20日 11時) (レス) id: 8a36f75a5a (このIDを非表示/違反報告)
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