MIU404《Another Story》 (ページ26)

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〜Aの過去〜

No side

『お母さん！！』

「なに、A」

お母さんを呼んだAに笑いかけたAの母親。

これは彼女が小学1年生の頃のことだ。

A家は笑顔が絶えない家だった。

明るく元気な母親。

真面目だけど家族思いの父親。

その間に生まれた1人娘のA。

とても幸せな家庭だった。

そう、あの日が来るまでは……

2011年の冬。
Aが小学2年生の頃。
事件は起きたのだ。

その日A家は家族3人で公園にピクニックに来ていた。

お昼を食べ終わって、Aが言った。

『ちょっと遊んでくるね！』

Aは遊具がある方へ駆けて行き、遊んでいた。

と、その時。

彼女の目の前に蝶が飛んできた。

彼女は蝶を追いかけて走り出す。

気づいた時には既に公園を出てしまっていたのだ。

母親はそれに気づいてAを呼びに行った。

「A〜！公園から出てるわよ、戻ってきなさい！」

優しい母親は強くは言わず、微笑みながらAに言った。

Aはその声、その表情を見て怒ってるとは思わなかったのだ。

だからそのまま蝶を追いかけた。

「あぶない！！！！」

急にAの耳元で聞こえた母親の声。
大好きな温もりに持ち上げられる体。
抱きしめられる感覚。

「お母さん！！A！！！」

次にAに聞こえたのは焦ったような父親の声だった。

Aは自分の体にくっつく母親の腕から抜け出す。
そして母親を見たー

彼女の母親はそこに血だらけで倒れていたのだ。

走ってきたトラックの運転手。
サイレンを鳴らして走ってくる救急車。パトカー。
母親を抱き泣き叫ぶ父親。

小学2年生のAにはそれ以上の情報は頭に入ってこなかった。

彼女の前をあの蝶が横切った。