MIU404《Another Story》 (ページ25)

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痛む体にムチを打って上半身を持ち上げる。

壁を使って立ち上がって自分の部屋に入る。

着ていた制服を脱いで着替え、いつものようにメイクをして外へ出る。

あの日伊吹と会って以来あのニコニコマートには行かなくなったが、彼がもうニコニコマートで働いてないとわかったので今日はあのニコニコマートへ行く。

あそこが1番近いのだ。

入店して迷うことなくお酒の陳列棚へ。

いつも通り瓶ビールを6本買ってレジに並ぶ。

私の番になってタバコも頼もうとした時にふと

「吸ってないならいいよ」

桔梗さんのそのひと言が頭で再生される。

ー今日はやめておこう。

私はタバコを吸い始めて初めてタバコを買わないという選択をしたのだ。

結局、瓶ビール6本を持って家に帰る。

いつものようにリビングにそれを置き、部屋に戻る。

正直、まさかお酒が切れてるなんて思わなかった。

お酒を飲んでいたら22:30なんて父親はいつも夢の中だ。

だから安心して焼肉に行ったし、父親が寝るであろうギリギリの時間まで公園で時間を潰した。

でも今日は酔ってなかった。

ということは本当に1本もなかったということだ。

なんて災難なんだ。

これからは定期的に、というか毎日お酒の本数を確認しておかないといけない。

はぁ…

今日は蹴られる計算じゃなかったんだけどな

そう呟いて嘲笑ってみる。

桔梗さんたちの優しさに触れてしまった今日、桔梗さんとゆたか君の関係を見た今日、今まで父親にされてきた事が普通ではないと改めて感じてしまった。

もちろん、普通で無いことは知ってたから驚いてはいないんだけど。

ただただ2人の関係が羨ましかった。

親と顔を合わせて笑えるゆたか君が羨ましかった。

私だって本当は父親と笑ってみたい。

父親の笑顔なんてもう何年見てないんだろうか。

お母さんがいなくなったあの日からだ。

もう何年前だ。

思い出せすらしないほど遠い記憶。

私の家も普通の家のように笑顔が沢山だったあのころ。

懐かしいな。

お母さん、元気かな…

私はゆっくりと目を閉じて眠りに落ちた。