■1年の始まりは優しさから。 ページ21
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1月1日。
夕方までのんびり過ごしたあと、お互いに着物を着て初詣にやってきた。
『元日は賑わってるね……もうすぐ日もくれるけど』
「元日やしな。しゃあない」
露店も出てて参拝客で賑わっている。お祭りみたいに賑やかだな……
・
かなりの行列で参拝まで並んでしまったが無事にお参りを済ませ、お守りも買えたのでホッとしながら帰路につく。
『いい1年が始まりそうだね。』
「せやなぁ。天気もええしな。」
雲ひとつない快晴……冬空でここまで晴れてるのってめずらしな。これなら着物でも疲れずに歩けそう。
なんて思っていたけど………
(ちょっと疲れたかも……足痛くなってきたな)
人が多いせいか帰り道なのに全然進まない。着物と下駄のコラボはきついな。
「A、あそこ寄っていかへん?」
哲人くんが指差すほうに『甘味処』と書かれた暖簾が見えた。
『こんなところにお店あったんだね。行ってみたい!』
ふたつ返事でうなずくと、心なしかほっとしたように哲人くんが微笑む。
私の腰を支えるようにして、お店のほうへ歩き出す。
(もしかして…疲れてたことに気づかれてる?)
(やっぱり、哲人くんには敵わないな)
『ありがとう、哲人くん』
「おん。好きなだけ食べてえーよ」
『そっちじゃないんだけどね・・・』
あっさり流しつつも、支えてくれる哲人くんの横顔はいつも以上に優しかった。
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作者名:梓音。 | 作成日時:2023年6月19日 4時