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side of 廉__


Aに返すことのできなかった
腕時計を胸ポケットにしまいながら
駅に向かって歩く。


少しして、さっき
Aを抱えていた人がおれに追いついた。



「彼女、君に謝ろうとしてたけど止めときました。
あんな酔ってるしね」

「…知ってるんすか?
おれが浮気したって」












「知ってるよ」


さらりと返ってきた言葉は
まるで春の風のように爽やかに流れていく。


彼は続ける。




「おれね、逃げてるんですよ。
おれ、会社の跡取りで本当は必死に会社のこと
考えなきゃいけないんですよ。
もちろん、その時が来たら大人しくなるつもりでさ。


親父がね?
信頼の厚い人で、
おれはそのプレッシャーにまだ耐えられそうになくて。
今もこうやって逃げているんですけど」



「あいつもおれから逃げたんすかね。
一ヶ月近く連絡とれなくて。
おれに愛想つかしたんすかね」



やっと。
ちゃんと謝れると思ったら、
あんたみたいな瞳の透明な男と一緒。



自業自得といいつつ。
どうにも運命はおれを嫌う。


「逃げても。
逃げ続ける人間ではないでしょう、彼女は。
少なからずきっかけが必要だったとしても」




なんやろ、
この人は、何に。

何に似てるんやろうか。




「彼女は、おれを許そうとしてくれる人やと思います。
やからこそ、おれには向かない人なんやと思います」


「おれ、今ここに住んでなくて。
遠い島にいるんですけど、あそこはね、すげいいところ。
おれもフラッと行ったらハマっちゃって。
もう家出っつーか。コンビニ行くみたいな勢いで出てって、住み着いちゃった」


彼が
”ここにいたらダメなのはおれの方なのにな”
って漏らした意味はわからなかった。


せやから、
わからない代わりに聞いた。



「Aのこと」
「はい?」

「好きですか」
「はい」



夏に入道雲の隙間から顔を出す
ああ、あれに似てるんかと思った。

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設定タグ:岸優太 , 永瀬廉 , ジャニーズJr.   
作品ジャンル:恋愛
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かめ - めっちや、よかったです!この、作品好き (2017年7月7日 18時) (レス) id: 185613c9fe (このIDを非表示/違反報告)
龍風(プロフ) - この作品の言葉のチョイスや物語の雰囲気が大好きです!とっても素敵なお話でした!! (2015年8月30日 21時) (レス) id: 1b72ee1613 (このIDを非表示/違反報告)
じぐさ - 今まで読んだ中で1番位に良かったです!感動というか、楽しかったというか、言葉に表せないのですが素晴らしい作品でした!どちらの作者さんもこれからも頑張ってください! (2015年8月26日 21時) (レス) id: b75a77f642 (このIDを非表示/違反報告)
星葉(プロフ) - すごく良かったです!文がきれいで読みやすかったです。これを映像化してほしいぐらい私この作品好きです! (2015年8月16日 18時) (レス) id: ed2de52e9c (このIDを非表示/違反報告)
Natsumi .(プロフ) - ゆいさん、なつです!元平野なつです!お久しぶりです!! りんりなさんとゆいさんのコラボ…全然知らなくて今更いっき見← 素敵な作品でした、また、書いてくださいおふたりで!!待ってます!! (2015年8月16日 11時) (レス) id: 844a66fde4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆい☆&リンリナ x他1人 | 作成日時:2015年8月2日 17時

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