24 ページ24
「もしもし？」
『おはよ、元気にしてる？』
「うん、毎日充実してる。」
『…有給中に俺がわざわざ電話した意味わかってる？』
「何かあったんだね」
『CC証券の専務の人が事故に遭って亡くなってもうて、担当代わるから企画書全部作り直しになってて… 』
「うそ…最初から？」
『ぜーんぶ！見積もりまで終わったとこやったのに……。先方の要求かなり変わったから、資料集めが大変で…多分葬式とかにも顔出さなあかんし、とりあえず人が足りひん』
「でも私…そのプロジェクトおりたよ？」
『や、A居らんとキツイ。人員他のとこから割いてもらったけど新人ばっかやし』
「…わかった、すぐ戻るね」
『ごめんな、待ってんで！』
電話を切る。
あーあ。優太くんと、もっといたかったな…
この島に、もっと、いたかった。
「私、帰ることになったよ！」
「……え？」
「仕事のトラブルあったみたいで。」
予定より、ちょっと早まっただけ。
むりやり笑顔を作って、優太くんに手を振る。
「この数日間、ありがとうございました」
「は？今？帰んの？」
「うん、帰るよ？優太くんの仰せの通りにね！」
ああ、耐えられない。
惨めで、涙が出そうになる。
2階に上がろうとしたら、優太くんに腕を掴まれる。
「待てよ、なんだよ、それ…」
「離して？準備しなきゃ」
「急すぎんだろ……」
「帰ってほしかったんだから丁度良かったでしょ！」
「ちがう、おれは……」
綺麗な瞳が、ゆらゆら揺れて
熱を持って、私を見る。
そんな目するから、
わたし、自惚れちゃうんだよ。
優太くんの服を引っ張って、
少しだけ背伸びして、
キスをした。
「………バカ！」
驚いたような彼の顔に吐き捨てて、階段をのぼる。
急いで荷物をまとめて1階に戻ったら、そこにはもう、優太くんの姿はなくて。
悲しいような、ホッとしたような。
宿泊費だけ置いて、民宿を後にした。
神宮寺ちゃん、オーナーさん、何も言わずに出て行ってごめんなさい。
そのまま船に飛び乗る。
離陸して、島が離れていく。
それを見ていたら、涙が出た。
・
___私、恋してたんだ。
旅先で出会って、まだまだ知らないこと沢山あったけど。決して、言葉にはしなかったけど。あれは、確かに恋だった。
あの綺麗な瞳が、好きだった。
無邪気な笑顔も。
ひと夏の思い出にしよう。
大事に鍵をかけておくんだ。
寝不足で、頭が眩む。
止まらない涙を誤魔化すように、
目を瞑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2013人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かめ - めっちや、よかったです！この、作品好き (2017年7月7日 18時) (
レス) id: 185613c9fe (このIDを非表示/違反報告)
龍風(プロフ) - この作品の言葉のチョイスや物語の雰囲気が大好きです！とっても素敵なお話でした！！ (2015年8月30日 21時) (レス) id: 1b72ee1613 (このIDを非表示/違反報告)
じぐさ - 今まで読んだ中で１番位に良かったです！感動というか、楽しかったというか、言葉に表せないのですが素晴らしい作品でした！どちらの作者さんもこれからも頑張ってください！ (2015年8月26日 21時) (レス) id: b75a77f642 (このIDを非表示/違反報告)
星葉(プロフ) - すごく良かったです！文がきれいで読みやすかったです。これを映像化してほしいぐらい私この作品好きです！ (2015年8月16日 18時) (レス) id: ed2de52e9c (このIDを非表示/違反報告)
Natsumi .(プロフ) - ゆいさん、なつです！元平野なつです！お久しぶりです！！ りんりなさんとゆいさんのコラボ…全然知らなくて今更いっき見← 素敵な作品でした、また、書いてくださいおふたりで！！待ってます！！ (2015年8月16日 11時) (レス) id: 844a66fde4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆい☆＆リンリナ
x他1人 | 作成日時：2015年8月2日 17時
