Gerbera (ページ44)

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『川村さん、付き添いありがとうございました』

壱「あ、いえ、……戻りましょうか」

スっと手を差し伸べる壱馬は
迎えに来た王子のようで、少し悔しい

Aさんを真ん中にして、
タクシーの後部座席に乗り込み、
自分の手を見るとまだ震えている

ふわりと包まれるようにAさんの手が重なる

少し冷たい手が震える手を撫でる

Aさんを見ると優しく微笑んでいて
先程までとは違う鼓動が走る

"大丈夫"、そう言ってる気がする

気付くと震えも収まって
ゆっくりと指を絡めると
少し驚いた顔と、照れたように口元を緩ませるAさん

壱「……あのー……、俺いるの忘れてません？」

苦笑いで繋いだ手を見つめる壱馬に
慌てて離そうとするAさんの手を強く握ると
驚いたように振り返る

『こ、小森さん、離して……』

隼「やだ！やっとAさんがデレてくれたのに！」

『デレ…？！デレてない……っ！』

隼「あ、照れた？！可愛い！！」

壱「……もう着くんで離した方がいいですよ？」

その言葉に視線を進行方向へ向けると
パトカーやら警察官やら…報道陣までいる

隼「え、何この騒ぎ」

壱「あぁ、さっきAさん落とされた時、
たまたま翔平がTikTok撮ってたんすよ

そこに落とした奴写ってて……
翔平が通報したんやと思います」

なるほど、と頷いていると
空気の読めないタクシーはその人集りの前に止まる

うーわ、ここで止める？

案の定カメラ来てるよ？

心の中で漏れた声は、きっと壱馬と一緒だと思う

苦笑いの壱馬と目が合って、小さくため息をつく

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